法教育インタビューシリーズ(7) 静岡大学教育学部教授 磯山恭子先生

 2014年3月25日(火)、静岡大学教育学部で社会科の教員養成に携わる磯山恭子教授にお話を伺いました。磯山先生はアメリカの法教育研究をされているほか、国内の様々な法教育研究に関わられ、法務省の法教育推進協議会委員も務めておられます。

――ご自身のプロフィールを簡単にお聞かせください。
磯山先生:「大学では、社会科の教員免許をとるために教職課程を履修しました。他学部の学生が教員免許のために履修するので、わからないことがいろいろあり、戸惑う体験をしました。大学院へ進学した後、法教育をけん引する先生方と出会うことになりました。」

――法教育レポートでは、「教科書を見るシリーズ」で教科書に書かれた法教育をご紹介していますが、ご感想はいかがですか?
磯山先生:「現場では、狭い意味の法にとらわれやすいという傾向があると思います。個別の法を理解するのではなく、体系化することが大事です。法を実感できるルールづくりの学習活動は大切だと考えます。平成20年の小学校社会科学習指導要領作成には協力員として参加しました。小学校社会科における法教育の趣旨は、文部科学省の月刊誌『初等教育資料』に書きました。教科書はいろいろな人が見て、いろいろな考えが言えるところに意味があると考えます。」

――静岡大学附属学校における法教育実践から授業づくりの事例をご紹介いただけませんか?
磯山先生:「最近では中学生向けに「私法とは何か」というテーマで学生が授業づくりをしました。「コミュニティー内のルール形成」という授業でした。「コミュニティー内のルール形成」は、海底火山の噴火により新島ができたニュースに発想を得て、そういう新島の農地をどう開拓し、そのための資金をどう配分するか、狭いコミュニティーの中でのルールづくりを考えさせるという授業です。静岡県弁護士会の弁護士の指導を受けました。弁護士会館などで打ち合わせさせていただくための日程は、学生の都合を最優先に考えて、弁護士の都合と調整する役割を私が行いました。」

――静岡大学の教員養成課程における法教育の教育はどのような状況ですか?
磯山先生:「教員養成課程の教育では、社会科教師として何が必要かという視点を取り入れやすくなっています。そういう意味で、法教育がやりやすい環境といえます。教育学部の教員養成課程の1学年は300名程度で、そのうち社会科教育専攻は30名程度です。2年生の前期に社会科教育法Ⅰが開講されますが、そのうちの3コマ(1コマ90分間)を法教育にあてています。社会科教育法Iは小学校教員の免許取得に必要で、95%程度の学生が履修するといえます。
 大学3年生の後期の演習では、法教育授業をグループで1つつくることになっています。毎年、おおむね4名1グループで授業づくりをします。教育実習とは別に、静岡大学附属学校で法教育の授業実践をさせてもらいます。今年度は3コマの授業を行いました。先にご紹介した「コミュニティー内のルール形成」などです。
 また、3月のオープンキャンパスでは、附属島田中学校の3年生を受け入れています。各教科ごとに2~3名の先生方が研究室をオープンにし、それぞれ8名位の中学生が大学見学に来ます。その際、社会科教育研究室では、静岡大学ロースクール法廷教室に中学生を招待し、模擬調停を実施しています。模擬調停には静岡県弁護士会がジュニア・ロースクールで実施しているプログラムを使用しています。大学生も参加させてもらい、弁護士と中学生と大学生の三者で授業をします。大学生は、中学生のアドバイスをしますが、事前に私もシナリオを見て学生にアドバイスをします。参加する大学生は2・3・4年生で、それぞれの目的意識は違いますが、下級生は上級生の真剣な姿を見て、上級生は下級生の新鮮な発想に触れ、お互いの勉強になっているようです。」

――3月16日には「法に関する教育教材開発研究会」による「現代の小学生の道徳的・法的発達について考える」シンポジウムがあり、先生は司会を担当されておられましたが、ご自身の研究についてはいかがですか?
磯山先生:「法に関する教育教材開発研究会では、橋本康弘先生(福井大学)のコーディネートにより、私は海外の法教育事情を担当しています。今回のシンポジウムは途中経過報告でしたので、さらに研究を進めています。」

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