東京都中学校社会科教育研究会‘09法教育フォーラムin東京②
東京都中学校社会科教育研究会‘09法教育フォーラムin東京①からの続き
第2部 講演会(15:00~15:50)
〈東京都中学校社会科教育研究会会長 久保田先生 ご挨拶〉
法教育はいつ、どこで、誰が、どのように指導するかが課題です。法教育は家庭科、社会科で指導することが主になりますが、我々社会科教師が中心にならなければいけません。「生きる力」を育むためにも、ぜひ年間計画に組み込んでいただきたいと思います。参観日、公開授業の機会などに保護者の方に見ていただくなどもいいかと思います。
演題「法教育の充実に向けて」
講演者 大杉昭英先生 (岐阜大学教授、前文部科学省視学官)
(当日配布された資料より適宜引用させていただいております。)
〈はじめに〉
13年前私が文部科学省に入ったとき、「中等教育資料」という雑誌がありました。その中の檀ふみさんのエッセイに、「アメリカ留学中は常に“What do you think?”と訊かれた。」ということが書いてありました。自由で公正な社会をつくるとき、「私はこう思う。」と言うことが大切です。
〈1 私たちの生活は判断の連続〉
個人的な判断は、自分一人で判断できます。
社会的な判断には二通りあり、
① 社会(みんな)で決める=みんなの需要と供給で決まる場合(市場で決まる)と、
② 市場で決まらず、みんなの意見で決まる場合
があります。②では、最終的に決まらない場合、多数決になります。
〈2 社会的な判断力をどのように育てるか〉
アメリカでは「法」という言葉を使わずに、公正さを学ぶ授業を積み上げていきます。例えば「くまのプーさん」の教材では、グループのメンバーに蜂蜜を配分するときの公正さを考えさせます。吹奏楽部で誰がどの楽器を演奏するか決めるとき、どんなことを考慮するかという教材。大雨で川があふれたときの対策に関して、誰が利益を得、誰が税を負担するかについて公正な決定をするとき、何を考えるかといった教材もあります。
イギリスでは「シティズンシップ」という教科が新しく作られ、「あなたならどうしますか?」と問い続ける教科書が作られています。例えば、「自分のクラスが授業中騒がしいとき」、「夜、ご近所のパーティーの騒音で眠れないとき」、あなたならどうしますかと考えさせます。
〈3 日本の新教育課程では何が求められているか〉
学習能力面では「PISA型読解力」を高めることが求められています。これは、①テキストの中の情報の取り出し(読み取り)、②テキストの意味理解(解釈)③情報を知識や経験に関連付ける(熟考・評価)という3つの能力のトータルな力です。この力はフィンランドが世界一で、先生がどの教科でも「どうしてそう思ったの?」ということを3回ずつ訊くそうです。根拠を挙げて意見を述べることを重視しているのです。
学習内容面では「公共的な事柄への参画」が求められます。裁判員裁判などが例です。
〈4 法教育のねらいと主な学習領域〉
小学校では「ルールを学ぶ」:ルールを作ったり修正する経験や、公平な第三者として公正に判断する経験
「身のまわりのトラブル解決の方法を学ぶ」:ルールによるトラブル解決
中学校・高校では「法的紛争と法を学ぶ」:法を評価する経験、民法・刑法・憲法の原理
「第三者の立場から紛争を構成に判断することを学ぶ」:法によるトラブル解決
〈5 学校でおこなう法教育の体系図―「言葉と体験」の重視という観点から〉
学習とは体験と概念化の往復運動です。体験は直接体験から間接体験へと積み重なっていきます。
法教育の学習機会は生活科、社会科・公民科、家庭科、体育科、道徳の時間、特別活動、総合的な学習の時間があります。
小学校低・中学年:ルールが自分達のためにあるという原体験
小学校高学年:概念化とルールによる問題解決
中学校:概念化(法の役割)と活用
高校:価値についての概念化と活用
といった段階を考えるとよいでしょう。
〈おわりに〉
根拠を明らかにして判断すること、人の意見に納得したらそれを受け入れる寛容さが重要です。
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