法教育素材の紹介6 「ジャッジ  島の裁判官 奮闘記」

NHKドラマ「ジャッジ 島の裁判官 奮闘記」は、2007年10月6日から11月10日まで5回にわたり放送されて好評を得、その後DVDになりました。2008年には続編「ジャッジⅡ」が制作されています。数々の事件を通し、1人の裁判官が人間的に成長していく姿が描かれます。事件にはいろいろな種類があり、裁判所のさまざまな仕事や役割もわかります。

NHK DVD「ジャッジ 島の裁判官 奮闘記」
  中園健司 作   制作・著作 NHK 
  販売元 ポニーキャニオン (2009年)
  3枚組 本編289分(各回 約56分)

〈ドラマの舞台〉

 鹿児島県には離島の裁判所がたくさんありますが、ドラマの舞台はそのうちの1つとされる鹿児島地方裁判所大美島支部(架空)です。冒頭は飛行機から見おろす離島。透き通ったブルーグリーンの美しい海に囲まれており、裁判ドラマに抱きがちな暗く殺伐としたイメージを払拭してくれます。ロケシーンが随所にちりばめられ、南国らしいヤシの並木が青い空と海に映える風景は、見る者の心を癒してくれます。撮影協力は奄美大島などです。

〈主な登場人物〉

三沢恭介
 36歳。大阪地方裁判所の知的財産権専門部のエースといわれた優秀な裁判官。仕事の効率を優先するあまり、妻や子どもの気持ちを考えなくなっていました。東京の知的財産権専門の高等裁判所に配属になることを希望していましたが、同期の裁判官が急病のため、代わりに鹿児島県の離島の大美島支部へ転勤になります。
三沢麗子
 恭介の妻。専業主婦。休日もなく連日深夜まで仕事漬けの夫に不満で、小さな夫婦喧嘩を繰り返した末、一人娘を連れて別居していました。「やり直したいので大美島へ一緒に行ってほしい」という夫について島へ来ます。
三沢麻衣子 
 恭介夫婦の娘。小学2年生。「家で静かにするから、パパ、一緒に島へ連れて行って。」という一言で、頑なだった母親の心を動かしました。
谷川淳一
 大美島支部でただ1人の家庭裁判所調査官。面倒見のよい熱血漢。

〈第1回 新天地〉

チャプター1 0(時間):00(分)~0:23 人物紹介
 三沢は急病の同期裁判官から、「離島の裁判官は、民事・刑事・家事・少年事件を全部1人で担当する。こんな経験は他では絶対できない。裁判官として成長できる絶好のチャンスだ。」と言われます。実際、三沢はさまざまな事件を同時にかかえて、駆けまわることになります。「1人で何でもできる、一応一人前と認められた裁判官がするもの」「部下を持った支店長のようなもの」という三沢自身の説明もあります。
 裁判所には、書記官・事務官・家庭裁判所調査官という職務の人たちがおり、「チームワークが大事」と大美島支部の庶務課長が言っています。三沢は支部長も兼ねます。
 法律用語は、知的財産権専門部などのように、枠で囲った言葉が画面下に表示されます。

チャプター2 0:23~0:33 傷害事件第1回公判、家事調停事件の導入
 大美島支部の法廷には窓がある、という設定です。窓の外は海なので、覗かれる心配もないということですが、本当にそんな裁判所があるかどうか興味を感じませんか。
 傷害事件の被告人は、三沢の娘麻衣子の同級生(翔太)の父親であるという伏線が張られます。突然裁判所に駆け込んできた女性は夫婦関係調整調停中で、廊下で「4歳の息子を早く夫から取り戻したい。」と三沢を怒鳴りつけ、家事調停が初めての三沢は驚きます。

チャプター3 0:33~0:49 夫婦関係調整調停事件
 三沢は「手っ取り早いから」と夫婦同席の調停を提案し、「今までのいきさつから同席は避けたほうがいい」という谷川調査官の勧めを退けます。案の定、調停で騒動がおき、三沢は反省します。「父親のいうことが本当かどうか確かめたい」とプレイルームでの母子対面を提案し、解決に動き始めます。三沢が気づいた大事な事実とは? 見てのお楽しみです。

チャプター4 0:49~0:56 民事再生事件の導入、傷害事件第2回公判(判決宣告)
 島の特産品である紬(つむぎ)の工場が経営難に陥っていることが紹介されます。傷害事件の判決では、翔太の父親は懲役10か月になります。三沢の下した有罪判決が原因で、麻衣子は翔太やクラスメートからいじめられ、波乱が予告されて次回に続きます。

(チャプター5は次回予告編です。)

〈第2回 迷走〉

チャプター6 0:58~1:13 貸金請求事件、令状当番
 貸したお金をめぐり、「貸した金を返せ」「返したはず」という老人同士の民事事件は、弁護士のつかない本人訴訟という珍しい状況です。ラウンドテーブルという、リラックスしながら話ができるように配慮された法廷が紹介されています。三沢は老人達のいい加減さに驚きますが、書記官は「島の人はおおらかで、とりあえず裁判所にいけば何とかなるだろうと思っている。」と笑っています。
 紬工場の民事再生の件では、担当の畑弁護士がスピーディーな再建をしたいと希望し、民事再生事件が初めての三沢は勉強します。
 家では麻衣子がストレス解消にやけ食いをして夜に激しい腹痛を起こし、両親は心配します。いじめを疑う麗子に、「麻衣子に聞けばいいじゃないか。」という三沢。「聞けば話すとは限らないでしょう。」と、麗子は学校へ相談に行くことにします。そのさなか、逮捕状請求の電話が入り、三沢は裁判所へ駆けつけます。
 翌朝、学校を休む麻衣子に、三沢は「何も話してくれなきゃ、パパもママもどうしたらいいかわからないだろう。」と、つい語気が荒くなります。麻衣子は布団に隠れてしまいました。

チャプター7 1:13~1:33 少年事件
 初めての少年事件は、16歳の少年。タバコの自動販売機を荒らして現金を盗み、逮捕されました。万引き1回、置き引き1回。中学卒業後一旦就職しましたが、退職後は盛り場で遊んでいます。母親は3年前に離婚し、2年前に少年を連れて東京から島へ戻り、仕事に追われています。3回目の家庭裁判所送致なので、三沢は少年がどの程度反省しているか、鑑別所で一度きっちり調べてもらうことを提案します。
 少年審判の席で反抗的に黙る少年に、三沢は「黙ってちゃわからない。16歳にもなって恥ずかしくないのか。」となじってしまいます。少年は廊下から逃走。行方を追うため、島に緊急配備が敷かれます。冷静な対応ができなかった三沢は深く反省。谷川調査官には、「少年は支部長が思っているより幼い。どうしてそういつも結論を急ぐのか?」と言われます。
 少年は見つからず、三沢と谷川は少年の自宅の前で夜を明かします。一方、麻衣子は母親から裁判官の仕事の大切さを話してもらいます。

チャプター8 1:33~1:47 少年事件
 谷川の車の中で一夜を明かした2人の前に少年の母親が現われ、思い出などを語り始めます。その話から少年の居場所を思いつく三沢。この後の展開は見てのお楽しみです。
 三沢は麻衣子にも話します。「またみんなと仲良くなれるように、パパとママも頑張るから、今度の日曜、車を借りて島巡りをしよう。」麻衣子は喜びます。日曜日、マングローブの林をカヌーで進みながら、三沢は裁判官になったわけを家族に話しました。麗子は島に来てよかったと感じます。

チャプター9 1:47~1:53 民事再生事件落着
 三沢は原弁護士とともに、民事再生手続により再建できることになった紬工場を見学します。麻衣子は迎えに来てくれた女子とともに再び登校し、学校では先生が翔太を仲直りに連れてきてくれます。
 次の事件は、夫の介護に疲れた妻が夫を殺したという事件です。その頃、東京では三沢の母親が急病で入院したという電話が入ります。続きは第3回へ。

〈この続きはDVDで〉

 人の気持ちを考えない、冷静さを欠く、結論を急ぐ、と周りから指摘される裁判官。素直に自分の未熟さを認めて、最良の選択をしようとする姿に、次回への期待が膨らみます。

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