東京弁護士会「夏休みジュニアロースクール」

2009年7月23日(木)、24日(金)の二日間にわたって、東京弁護士会による中高生向け夏休みジュニアロースクールが霞ヶ関の弁護士会館で開催されました。

裁判傍聴、体験ジュニア裁判員、刑事模擬裁判、ルール作りの4コースがあり、このうちルール作りコースを見学させていただきました。

ルール作りコースはジュニアロースクールとしては初めての試みで、24日、午後1:30~4:30、女子2人、男子5人、合計7人の参加者とスタッフの12人の弁護士で行われました。

問題状況の設定

郊外の住宅街に駐車場300台付の総合ショッピングセンターができました。24時間営業で、ゲームセンターや映画館もあり賑わっていますが、周囲の交通渋滞が起こり、騒音やごみの散乱も目に付くようになりました。娯楽施設は夜遅くまで高校生などのたまり場になり、中には暴走族にお金を巻き上げられるといった被害も出ています。
このような問題を解決するため、皆が納得できるようなルールを作ります。正解があるわけではなく、皆が納得できることが大切で、自由な発想で自分の意見を伝えることを重視してくださいと言われます。

登場人物

ショッピングセンターの店長: 地域に貢献したいという気持ちがあります。
近くに住む会社員: 42歳、妻と子どもと暮らす。
騒音と渋滞で迷惑を感じています。
中学校のPTA会長: 50歳、夫と豚カツ屋を営む。
ショッピングセンターのおかげで豚カツ屋も繁盛していますが、子どもの教育上心配してもいます。
高校生: ショッピングセンターからバイクで10分程の所に住み、友達とよく利用しています。
近くに住む女性新聞記者: 29歳、犬と暮らす。
車の利用が多いので、ショッピングセンターの駐車場が広いのを気に入っています。24時間買い物ができるので助かるし、映画も好きですが、犬の散歩のとき近くの公園のごみが増えたことに気づき、何とかしたいと思っています。

ルール作りの流れ

①役の割り振り

 生徒達が主催者によって5人の登場人物役に割り振られます。店長役と高校生役は参加人数の関係上2人ずつとなり、5つのテーブルに分かれました。各テーブルには弁護士が2人ずつ配置され、生徒達の相談にのります。

②登場人物の詳しいプロフィール設定

 それぞれの役に、どんな人物なのか詳しく書いた紙が渡されます。他の役の人のことは書いてありません。それを見ながら、まず自分の考えだけで自分の役の主張をワークシートに書き込みます。次に、弁護士と相談しながらもう一度何を主張したいか考え、それを画用紙にマジックで書きます。弁護士の先生方は優しいお兄さん、お姉さんという感じで、あちこちで笑いが起こり、皆さんリラックスしてきます。進行の方が「わがままでいいんですよ」と励ましてくれます。

休憩

・・・この間にテーブルの配置換え

③全員1つのテーブルを囲んで、各人物が店長への要望を主張

 突然ですがといって、店長役の生徒の中から1人が司会者に指名されました。本当に突然の役割なのに、落ち着いて司会をしてくれました。皆自分の役に成りきって、言いたいことを言います。今日初めて会った人達ばかりとは思えないほど上手で、リアリティーに満ちた発言に笑い声が絶えません。

④問題点の確認

司会者が弁護士の先生と相談しながら、それぞれの人物に問題点を確認していきます。問題は4つありました。

・騒音
・高校生などがたむろすること
・交通渋滞
・ごみ

⑤問題を解決するための方法を考える

 進行の方が、譲れるところは譲って解決方法を考えましょうと促します。騒音もレベルの問題ということもあるので、店長に部分営業の可能性を打診してくれました。
 店長が24時間営業をやめてほしいという会社員の主張を聞いて、娯楽施設部分を午前2:30までにしましょうと譲歩します。そこへPTA会長が割って入り、高校生がそんな時間まで出歩くのはおかしいと主張。高校生役は夜でないと遊ぶ時間がないから、遅くまで営業してほしいとわがままを言います。店長は娯楽施設の閉店時間でさらに譲歩した上、18歳以下の入場制限時刻を提案し、妥協していきます。
 騒音やたまり場になることについては、店内にポスターを貼ったり、警備員に注意を促してもらったり、高校に注意を頼むなどのアイデアが出ます。渋滞緩和には駐車場の出入り口増設や、右折禁止を考えます。駐車料金はどうしようか考えているうちに時間がきてしまい、ごみ問題に入れないうちに終了となりました。

自己診断票記入

 ルール作りでわかったこと、作ったルールの評価などを書き込みます。

進行の方のまとめ

議論がとてもよく噛み合っていたので、話し合いの過程が大切と考え、あえて全ての問題を解決しなくてもいいとして、時間切れということになりました。

弁護士の先生方の感想

 人の意見を聞くことは疲れることなのに、他の人の考えをよく聞いて、他人の利益を考えられたのがよかったです。役になりきれるということも他人の立場に成れるということなので、素晴らしいです。29歳新聞記者役は身の周りにモデルがいないので難しかったでしょう。

修了証書授与

 最後に1人ずつ「ルール作りコース」の修了証書を貰って終わりました。

 参加者は学校に貼ってあったポスターを見てという人、自分でインターネットで見つけた人、おうちの方に言われて来た人、いろいろでしたが、初対面でもチームワークよく話し合うことができ楽しい雰囲気でした。

今回はジュニアロースクールとしては初の試みということで、参加者が少ないのが残念でしたが、来年以降発展していくことを期待しています。

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