第3回 高校生模擬裁判選手権 関東大会①
2009年8月8日(土)、東京霞ヶ関の弁護士会館と東京地方裁判所を会場に、高校生模擬裁判選手権関東大会が開催されました。同日、関西大会(大阪)・九州大会(福岡)も開かれています。
今回は最高裁判所、法務省、検察庁の共催を得られたということで、裁判員裁判用法廷を含む各地の地方裁判所の本物の法廷が試合会場となったこともあり、出場校の生徒さんたちもより一層張り切っているようでした。
なお、前回は関東大会、関西大会それぞれの優勝校対決となる全国大会がありましたが、今年は開催地が3箇所に増えたため全国大会はありません。
出場校(50音順)
・公文国際学園高等部(神奈川) | ・湘南白百合学園高等学校(神奈川) |
・東京都立西高等学校(東京) | ・桐朋高等学校(東京) |
・日本学園高等学校(東京) | ・山梨学院大学附属高等学校(山梨) |
・早稲田大学高等学院(東京) | ・早稲田大学本庄高等学院(埼玉) |
審査員
法曹三者、学識経験者、マスメディア関係者等、20名
試合説明
事件のシナリオは、実際の事件を基に弁護士会が作成したものです。
各高校は検察チームと弁護チームを作り、それぞれのチームが1試合ずつ行います。検察官請求証人役は検察側チームが、被告人役は弁護側チームが出します。
裁判官・裁判員席には審査員の方が5名と試合を進める裁判長役やタイムキーパー役などが座ります。
準備には支援弁護士3名と支援検事が各校へアドバイスに出向いてお手伝いされたそうですが、試合が始まったら支援弁護士・検事はアドバイスしてはいけないルールです。
証拠は①自宅内の実況見分調書、②争いのない証拠書類の内容が記載された「合意書面」の2つで、これについて取り扱うのは試合では省略され、法廷で証人尋問(被害者)と被告人質問が行われます。
試合の時間配分は以下の通りで、時間配分を厳守しなければなりません。
担当 | 手続き | 時間 |
裁判官 | 開廷、冒頭手続き | 5分間 |
検察官 | 検察官冒頭陳述 | 5分間 |
弁護人 | 弁護人冒頭陳述 | 5分間 |
検察官 | 検察官請求証人尋問 | 15分間 |
弁護人 | 同 | 15分間 |
弁護人 | 被告人質問 | 15分間 |
検察官 | 同 | 15分間 |
論告・弁論検討時間 | 10分間 | |
検察官 | 論告 | 10分間 |
弁護人 | 弁論 | 10分間 |
被告人 | 最終陳述 | 若干 |
裁判官 | 結審 | 若干 |
審査は被告人最終陳述までのやり取りから、審査員がわかりやすさ・尋問等の構成・態度を考慮し点数をつけます。それを全試合終了後持ち寄り、総合点で優勝・準優勝を判定します。
試合スケジュール
開会式後、組み合わせ抽選が行われ、以下のように対戦相手が決まりました。
第1試合(10:30~12:20) | 第2試合(13:20~15:10) | |||
検察側 | 弁護側 | 検察側 | 弁護側 | |
101法廷 | 桐朋高校 | 公文国際 | 早大本庄 | 湘南白百合 |
102法廷 | 日本学園 | 早大本庄 | 山梨学院 | 早大高等学院 |
103法廷 | 湘南白百合 | 山梨学院 | 都立西 | 桐朋高校 |
104法廷 | 早大高等学院 | 都立西 | 公文国際 | 日本学園 |
公訴事実、罪名及び罰条
検察官は、被告人村山正明さんが以下の罪を犯したと主張しています。
平成17年1月3日午後8時50分ころ、被告人は、郡山市の自宅で、知人の小山実さんらと飲酒だんらん中、小山さんの自慢話に反論したことから口論となり、小山さんが鉄砲など怖くないなどと言ったうえ、被告人が持ち出した散弾銃を見て、「撃てるものなら撃ってみろ」と開き直ったことに激こうし、殺意をもって約2.6メートルの至近距離から散弾銃を発射し、小山さんの右肩甲骨部分に命中させたが、直ちに病院で治療を受けたため、右上腕、胸部などに全治4か月の傷害を負わせたにとどまりその目的を遂げなかった。 罪名及び罰条 殺人未遂 刑法第199条、第203条 |
こう書いてしまうと簡単に見えるかもしれませんが、村山さん一家の家族の構成や仕事、小山さんの仕事や付き合う仲間、小山さんが村山さんに何度かお金を借りに来ていた事情、村山さんの猟銃使用歴、お酒をどのぐらい飲んでどのぐらい酔っていたか、二人の年来の感情のありよう、小山さんが村山さんを挑発するようなことを言ったかどうか当日の言動、村山さんは撃った後助けようとしたかなど、考えねばならない事柄は膨大です。
村山さんは小山さんを撃ってしまったことは認めているものの、銃に弾は入っていないと思っていたと主張しているのに対し、検察官は殺人未遂として問議していますので、村山さんに殺意があったかどうかが争点となります。事実を多面的に把握し、論理的に思考し、表現する力が問われます。
見どころは検察官請求証人尋問で、被害者の小山さんが証人として弁護側の質問に答えるところ、被告人質問で被告人の村山さんが検察官の質問に答えるところです。
では、次回は、以上の2つの見所に注目して実際の対戦を見てみましょう。
アーカイブ
- 2019年12月 (1)
- 2019年11月 (1)
- 2019年10月 (1)
- 2019年5月 (1)
- 2019年4月 (2)
- 2019年3月 (1)
- 2019年2月 (2)
- 2019年1月 (1)
- 2018年12月 (1)
- 2018年10月 (2)
- 2018年9月 (2)
- 2018年8月 (1)
カテゴリータイトル
- インタビュー (16)
- はじめに (1)
- 取材日記 (325)
- 報道から (5)
- 対談 「法学教育」をひらく (17)
- 対談 法学部教育から見る法教育 (5)
- 年度まとめ (10)
- 往復書簡 (10)
- 河村先生から荒木先生へ (5)
- 荒木先生から河村先生へ (5)
- 教科書を見るシリーズ (21)
- 法教育素材シリーズ (7)