水戸地方裁判所 夏休み裁判所親子見学会

 2009年8月7日(金)と20日(木)、水戸地方裁判所南館で裁判所親子見学会が行われました。この催しでは参加者を“「裁判員制度サポーター」に任命します!”という、裁判所では全国初の試みがされました。

 見学会は10:00~12:00と14:00~16:00のどちらか、2時間のコースです。対象は小学4、5、6年生と保護者で先着25組程度(葉書またはFAXで申し込み)ですが、きょうだいの小さなお子さんも一緒に参加でき、毎回盛況だそうです。
私が見せていただいたのは20日の午前でしたが、親子合わせて30人位、お友達同士でお誘い合わせらしく楽しそうでした。

まずは子どもの写真撮影

10時の開始前に、来た順にお子さんの顔写真を撮ってくれます。最後にもらえる「裁判員制度サポーター任命証」用です。

説明役は優しいお姉さん、お兄さん

裁判所に来たのは初めてという参加者がほとんどです。どんなところかなと子どもも大人も思っていますから、優しそうなお姉さんとお兄さんが迎えて下さり、ほっとします。
ボールペンや裁判員制度のパンフレットなどが配られ、今日最後まで勉強したら「裁判員制度サポーター」に任命されることを説明されます。
「裁判員制度サポーター」になったら、今日勉強したことをお友達や家族に教えてあげて下さい。特に難しいことをしてもらうというものではありません。今後イベント等があるときは、サポーターの方にもお知らせします、という趣旨です。
今日の注意事項としては、
・裁判所の敷地内は写真撮影は禁止です。(許可のあるときだけ撮影して下さい。)
・途中で具合の悪くなった方は申し出て下さい。
・保護者の方で、裁判員候補者の人がいても、ここで公表しないで下さい、
という3点でした。

DVD「リホちゃん、ナビスケの裁判所ってどんなところ?」上映

(上映時間は10数分)
内容は、
・裁判所の仕事:刑事裁判、民事裁判、少年審判、家事審判、調停など
・裁判所の種類:簡易裁判所、家庭裁判所、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所
・裁判は公開であること
・裁判員制度

裁判員制度の説明

 さて、ここで黒い法服をまとった裁判官の登場。実はにっこり笑顔の素敵なお姉さんです。
「これまでの裁判は法律の専門家だけで行うのでわかりにくいとか、本当にその判決でいいのか、という声がありました。そこで、国民に参加してもらうことで、わかりやすく納得のいくものにしようとするものです。」と説明してくれました。

 ポイントは10個あります。
①裁判員が参加するのは刑事裁判です。
②この制度は平成21年5月21日に始まりました。
③1つの裁判に参加する裁判員は基本的に6人です。(裁判官は3人です。)
 仕事は3つあります。審理に立ち会う(証拠を見る、証言を聞く)、評議をする(結論を決める)、判決に立ち会う、です。
④一定の重い犯罪についての刑事裁判にのみ参加します。(殺人や放火など)
⑤裁判員になれるのは選挙権のある人です。
⑥裁判員はくじで選びます。国民から平等に選ぶためです。
⑦辞退は原則としてできません。これも平等のためです。
⑧裁判員にならなくてもいい人は70歳以上の人、学生などです。裁判員になるのが怖いとか、面倒くさいからというのは理由になりません。
⑨裁判員裁判は3~5日で行います。
⑩守秘義務とは、一緒に裁判員になった人の名前、法廷以外の話し合いの内容、自分が結論についてどう思っているか、を話してはいけないということです。後から自分の意見に世の中から批判が出たりしたら、裁判員になるのが嫌だという人が出るかもしれないので、それを避けるためです。
 

質問タイム

ここで参加者からの質問を聞きます。

男子1:守秘義務を破ったら罰はありますか? 
→ 回答:あります。

男子2:なぜ裁判員は民事裁判に出ないのですか? 
→ 回答:国民が興味を感じやすいのは刑事裁判だろうと思われるからです。

男子3:裁判員裁判で一番日数が長くかかったのは何日ですか?
→ 回答:まだ東京と埼玉ぐらいしか例がないのですが、3~4日です。

保護者:茨城県内の裁判には茨城県の人だけが選ばれるのですか?
→ 回答:はい。そして茨城県の裁判員裁判は必ず水戸地裁で行われます。

筆者:一度裁判員をしたのに、また選ばれることはありますか?
→ 回答:くじなのであります。でも一度したからということで、辞退することもできます。

裁判員サポーター任命テスト

 それでは子ども達だけミニテストを行います。裁判官が説明してくださった10個のポイントがわかっったかどうか、確認するためのペーパーテスト10問です。親子で相談しながらやってもOK。
答え合わせをしたら満点は6人でした。

〈休憩10分〉

いよいよ見学

 水戸地方裁判所では裁判員裁判のために、昨年2月に南館を新築しました。2階と3階に裁判員裁判法廷が一つずつあります。

1)1階の今みんながいる部屋は裁判員候補者控え室でした。そういえば部屋の壁際にはロッカーがずらりと並んでいます。
実際の裁判員裁判のときは、ここで裁判員候補者に事件概要の説明、当日質問表の記入、手続きの流れの説明をするのです。

2)この部屋の後ろのドアに5番という番号が付いています。そこを通って出ると準備手続き室兼質問手続き室です。
裁判官や検察官、弁護士が候補者に面接し、質問したりします。この部屋は狭いので、参加者を半分ずつに分けて見学しました。

3)2階の法廷へ。明るいきれいな部屋の上段に裁判官や裁判員の席が作られています。大型モニターと小型モニター、ずらりと並んだ小さなマイクが印象的です。
傍聴席との間の仕切りを通って、裁判官席へ座らせてもらえました。
検察官席には大きな六法全書が置いてあります。

4)裁判長席の真後ろの扉の向こうは評議をする部屋に続いています。扉を通って評議室にも入れてもらいました。ここは裁判のときに裁判官と裁判員が打ち合わせをしたり、評議をしたりする部屋です。休憩もできるようにロッカー、ソファ、冷蔵庫もありました。
 「ここは検察官や弁護士さんも使うのですか?」という質問が出ました。答えは「いいえ。裁判官と裁判員だけです。」
 打ち合わせ用の大きなテーブルの真ん中に、はずせるようになっている仕掛けがあり、「それは何ですか?」と子ども達の興味は尽きません。

自由時間

 一通り全部見せていただいた後は、法廷に戻って自由に見学です。法服をたくさん用意して下さっていて、それを着て記念写真を撮ることもできます。
子ども達は思い思いに席に座ってみたり、マイクをいじったり、六法全書を開いたり。でも、「小型モニターはさわらないでね」と注意されます。

裁判員制度サポーター任命証授与

 先ほどの裁判官が法廷へ入ってきました。皆最後まで勉強できたので、これから任命証の授与をしてもらいます。最初に撮ってもらった自分の写真が付いているカードです。
裁判官が裁判長席に立って名前を一人ずつ呼んで下さり、子ども達はかしこまって前へ出てきて、賞状を受け取るときのように上手に貰うことができました。授与の瞬間を保護者の方が記念撮影すると、拍手が沸き起こり、なごやかに見学会は終了しました。

終わりに

 参加した子ども達は帰ってからきっとみんなに任命証を見せて、裁判員制度のことを説明してくれるでしょう。楽しい夏休みの思い出が、裁判員制度への理解や親しみへもつながる画期的な取り組みですね。係りの方のお話では、今回とても好評だったので、今後のことはこれからよく検討したいということでした。
一層の御発展をお祈りしたいと思います。

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