品川区立小中一貫校 伊藤学園 研究授業①
伊藤学園の市民科の研究授業を見せていただきました。
インフルエンザの影響もなく、3年生の子どもたちは元気で何よりでした。
伊藤学園プロフィール
伊藤学園は東京都品川区の小中一貫教育要領の趣旨に基づき、子どもたちが義務教育9年間を継続して学ぶ新しいタイプの学校です。子どもたちの発達の特性を生かして可能性を最大限に伸ばし、学力をしっかり身に付けさせ、よりよく生きる力を着実に培っていきます。(伊藤学園学校情報誌より)
沿革は平成17年度に区立伊藤中学校校舎を取り壊し、18年度末に小中一貫校としての新しい校舎が完成しました。伊藤中学校は区立原小学校と18年度の準備期間を経て一体となり、19年度から施設一体型の一貫校としてスタートしました。7年生からは区立大井第一小学校と区立山中小学校の卒業生が加わり、生徒数が増えます。
児童・生徒数 学級数 (平成20年度学校情報誌より)
学年 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | 7年 | 8年 | 9年 | 特別支援 学級(小) |
特別支援 学級(中) |
計 |
児童・ 生徒数 |
107 | 110 | 102 | 89 | 71 | 69 | 186 | 146 | 135 | 14 | 3 | 1032 |
学級数 | 3 | 3 | 3 | 3 | 2 | 2 | 5 | 4 | 4 | 2 | 1 | 32 |
授業
9月10日(木) 13:45~14:30
3年さくら組 39名(男子19名、女子20名) 授業者:栗原 慎 教諭
教科「市民科」 単元「言いたいことは、どんなこと」
領域:人間関係形成 育成する能力:コミュニケーション能力
始めは1枚の絵から
子どもたちの机の上には市民科の教科書が出ていません。どういう授業なのかと楽しみにしていると、先生は画用紙ぐらいの大きさの1枚の絵を見せました。2人の人が描いてあります。口を開いて話している人と、そちらへ顔を向け口を閉じて聞いている人です。
先生:「心の中で何をしているところか考えてください。では、手を挙げて。」
男子1:「話している。」
女子1:「聞いている。」
男子2:「人の目を見ながら聞いている。」
--人間関係形成領域では、1・2年生のときに正しい話し方、聞き方を身に付ける授業があり、子どもたちは相手の目を見る・うなずく・質問するなどの聞き方を学んでいます。このやり取りから、それが理解されていることが分かります。
先生:「今日は話し方についての勉強をします。みんなはどんな時に話しますか?今日どんな話をしたか、教えてください。」
--子どもたちは手を挙げて、遊ぶときや挨拶のことを話しました。
先生:「いつも上手に話せていますか?上手だと思う人、手を挙げて。(→少数)下手だと思う人。(→少数)わからない人。(→多数)」
ブロック・ゲーム
先生:「上手に話せているかわからない人が多いので、ゲームをしましょう。」
--ここで先生は、黒板に「めあて」として、「友だちに上手に話をしてみよう」と書いた紙を貼り付けました。次にブロックを取り出して見せました。
先生:「では机の上をきれいにしましょう。隣の友だちと話す役・聞く役に分かれ、上手に話す練習をします。机を向かい合わせにして下さい。」
--男女が必ずペアになっています。3人のところは三角になりました。
先生:「ゲームの仕方を説明します。ブロックは11個あります。話す役は先生からブロックの図形が描いてある秘密のカードを渡され、そのカードを見ながら、聞き役に指示を出してブロックの図形を作ってもらいます。聞き役は話す役から言われたとおりに作ります。最初は廊下側の人が話す役、校庭側の人が聞き役です。1回終わったら交代します。白い画用紙を1枚ずつ配りますのでついたてにして、相手をのぞかないようにしてください。説明をするときこういうことも考えてください。」
と言って、先生は黒板にこのような表を貼りました。
次に、校庭側の人には封筒に入ったブロック、廊下側の人には赤いカードが配られます。さっそく先生の合図でスタート!
赤いカードにはこんな図形が描かれていました。子どもたちは一斉に話す役の指示で、聞く役がブロックを組み立てます。あっという間に5分ほど経ちました。
先生:「やめ!では、柵をはずしてペアでうまくできたか確認してください。」
--すると、ほとんどのペアが作りかけのブロックを壊して、カードを見ながらまた作り始めます。
先生:「一回顔をこちらに向けなさい。手は膝の上へ。できた人?」
--誰も手を挙げませんでした。
先生:「いない?では、今度は交代するので、1回バラバラにして交換して。赤いカードは話し役に渡してください。同じではいけないので、今度は青いカードを話し役に配ります。めあてを確認してください。スタート!」
今回は、最初話す役だった子が「私から見て右側」とか、「下から順に」などと、相手にわかりやすい説明をしている場面も見られましたが、机をバンバン叩いてもどかしそうなペアもいます。
先生:「はい、そこまで。できたところは?→2つ。拍手!(みんな、拍手する。)」
話し合い
ここからは机を元に戻して、どうすればよくできたか、話し合いました。まず、ペアの人同士で3分ほど話し合います。穏やかに話し合うペア、黙ったままのペア、「わからなかったんだよー」とののしり合いを始めるペア、さまざまです。
先生:「はい、切り替えましょう。どう話をしたら完成できたか、意見があったら言ってください。」
男子3:「詳しく話す。」
先生:「例えば?」
男子3:「方向とか色。」
女子2:「落ち着いて話す。」
先生:「落ち着いてってどういうこと?」
女子2:「ゆっくり。」
男子4:「大きな声で話す。」
女子3:「ちょっと困ったんだけど、向き合っているから自分の右か相手のか、はっきりさせる。」
先生:「今のわかった?『相手の立場になる』ということだね。」
男子5:「声が出ていない人に、優しそうな声で話す。」
先生:「机をドンドン叩いていたペアはどうしてそうなった?」
男子6:「自然になっていた。」
男子7:「カードを配られてから、話を少しでもまとめてから話す。」
先生:「聞き役をしていて気づいたことはないですか?」
女子4:「相手を優先してあげるのがいい。」
男子5:「頭の中で考えて話す。」
まとめ
先生:「次の時間は上手に話すということをもっと深めていきます。今日のワークシートを書きましょう、鉛筆準備。」
--ワークシートが配られて、みんなが書き込み、授業は終わりました。
授業取材を終えて
相手と向かい合わせに座っているので、自分にとっての右が相手にとってはどうなるか、ということを発言した児童がいたことに感心しました。話がうまくできない人に対して、優しく話してあげるという思いやりも素晴らしい考えです。小学3年生でも、自分を含めた人間関係を相対化することができる子どもたちもいるのですね。
この授業は5つのステップからなる学習過程のうち、ステップ1の導入に当たります。この後ステップ2からどう展開してゆくのか、きっと子どもたちの「話す力」が高まることと期待されます。
この授業の後に引き続き、先生方の研究会が開かれました。
品川区立小中一貫校 伊藤学園 研究授業②に続く
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