品川区立芳水小学校 市民科授業①
品川区立芳水小学校は、近隣の区立三木小学校・戸越小学校・大崎中学校との連携グループによる小中一貫教育を行なっています。
こちらでも市民科の1年生と6年生の授業を拝見しました。
芳水小学校プロフィール
大正7年、株式会社明電舎社長重宗芳水氏、たけ子夫人が私財を投じて創設。重宗雄三氏まで三代にわたり、学校施設が大崎町へ寄付されました。昭和21年、品川区立芳水小学校と校名変更。再開発が急速に進む大崎駅に近いにもかかわらず、閑静な環境にあり、地域の幼稚園・保育園と1・2年生の交流教室などの連携、PTA・地域の方々の多様な支援を誇りにしています。(学校要覧、学校情報誌より)
児童数(平成21年度 学校要覧より)
学年 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | 計 |
児童数 | 54 | 50 | 59 | 40 | 54 | 60 | 317 |
学級数 | 2 | 2 | 2 | 1 | 2 | 2 | 11 |
授業
9月29日(火)9:40~10:25 1年1組 26名(男子13名、女子13名)
教科 市民科
単元名 「おうちのしごと」
領域:自己管理領域 育成する能力:責任遂行
〈前回の授業で出された家事のいろいろ〉
洗濯物干し・たたみ 風呂掃除 ごみ捨て 洗濯をする 日めくりカレンダーを替える
掃除 ご飯を作る 水遣り 靴磨き アイロンかけ ベランダ掃除 紙のリサイクル 新聞を取りに行く 買物 食事の準備 家の中の重いものを運ぶ 車の掃除 トイレ掃除
動物の世話 上履き洗い 食器を洗う
子どもたちは指名されると、席から立ってその椅子をきちんと机の中に入れます。それから発言して、「~です。」と、語尾も丁寧語で締めくくります。みんなとてもよくできているので、感心しました。普段から折り目正しい学習の態度が身についています。
〈6つの家事の中から自分で2つやってみよう〉
前回の授業で、「紙のリサイクル」「アイロンかけ」「洗濯物たたみ」「上履き洗い」「靴磨き」「食器洗い」の6つの家事の中から、自分のやってみたいものをそれぞれ1つ選んでいました。
今回の授業では、1つ目の家事に合わせて、2つ目の家事を先生の方で決めておきました。
1つ目の家事 | 2つ目の家事 | |
紙のリサイクル | → | 上履き洗い |
アイロンかけ | → | 靴磨き |
洗濯物たたみ | → | 食器洗い |
上履き洗い | → | 紙のリサイクル |
靴磨き | → | アイロンかけ |
食器洗い | → | 洗濯物たたみ |
〈10月3日学校公開まで2つの家事を練習する約束〉
芳水小学校では週末の10月3日(土)に学校公開をします。そのときまで、上記の2つの家事をおうちで練習するということを、ワークシートに書くように先生が説明しました。子どもたち、ワークシートに書いているようです。
〈10月3日におうちの人にきく質問を考える〉
ワークシートを書き終わったら、机をくっつけて6つの班を作りました。1つ目の家事毎の班です。
先生:「10月3日にそれぞれの班におうちの人が1人ずつ入って、家事のポイントを教えてくださることになっています。そのときに質問するとおうちの人は喜んでくれるでしょう。その質問を考えてください。」
女子1:「アイロンかけでやけどをしないために気をつけたほうがよいことは何ですか。」
先生:(板書してから)「気をつけたほうがよいことはなんですか、他の仕事にも言えますね。」
女子2:「上履きを洗うとき、どういう洗剤を使ったらよいですか。」
先生:「では、1つ目の家事について他にも聞きたいことをグループで考えて、画用紙に書いてください。終わったら2つ目の家事についても、2枚目の画用紙に書いてください。質問の例として、『1日のいつやるとよいですか。』というのもあります。」
先生は黒板に「めあて れんしゅうするかじのしつもんをかんがえよう。」と書いた紙を貼りました。画用紙は班の中の1人が受け持って、みんなの質問を書きます。
終わりに
2つ目の家事についての質問まで考えるのは時間が足りなかったようです。先生が「2つ目はやめておけばよかったね、」と謝っておられました。画用紙を提出して元の席に直します。今日のワークシートを記入し、回収して授業は終わりました。
この単元の指導計画案によれば、児童の中には「身の回りの整理整頓が苦手」、「自分で考え進んで取り組むことが少なく、大人の声かけが必要である」という実態があるそうです。そこで、「様々な仕事に、自ら進んで行なうことの大切さを知り、責任をもって最後までやり遂げることができる」ことを単元のねらいとしています。(指導計画案より)
岐阜大学の大杉昭英教授が「法教育の充実に向けて」の講演会で、「学習とは体験と概念化の往復運動」であり、「言葉と体験の重視」という観点からの法教育のお話をされましたが、この市民科の1年生の授業は、家事の「体験」をさせようとしています。ねらいは自分から進んで片づけができることにあり、法教育ではありません。しかし、おうちにはいろいろな家事役割があること、自分にもできる家事役割は何かを考えさせます。そして家庭の中の仕事を体験する機会を与えることで、今まで家事をしてくれていた人の立場に立てるようにもなるでしょう。
体験することが、自分を他人の立場に置くことができるようになる第一歩です。それは将来、多角的な視点から物事を見る法学習に必要な基礎となるでしょう。この市民科の授業は、体験をさせることで「ねらい」以上の「目に見えないカリキュラム」としての意味を持つ、豊かな授業であると言えましょう。
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