品川区立芳水小学校 市民科授業②

品川区立芳水小学校 市民科授業①からの続き

続いて、品川区立芳水小学校 6年生の市民科授業の模様です。

この日の授業は普段の6年1組の教室ではなく、視聴覚室を使いました。教室の壁際にはずらりとデスクトップ型のパソコンが並んでいます。児童1人に1台ずつありますが、まず子どもたちは部屋の中央に椅子だけ持ってきて腰掛けました。

授業

9月29日(火) 8:50~9:35 6年1組 28名(男子17名、女子11名)
教科「市民科」
単元名「大崎の街をより良い街に」
領域:自治的活動    育成する能力:自治活動

〈1学期にしたこと〉

先生:「1学期に大崎の街がどんな地域か、良いところをカードに書いて貼りました。そして街をアピールするCMを班毎に作りました。」

〈CM作りを振り返る〉

先生:「今日はみんなの作ったCMを見て、CM作りを振り返りましょう。」
黒板に「めあて 作ったCMを見て、CM作りを振り返ろう」という紙が貼られました。
先生:「自分の班以外のグループのCMをまだ見ていないので、これから見ましょう。必ず街の良さをアピールする発表にしてください。今から5分間、ちょっとチェックして。ナレーションが入っていないところがあるようです。」

子どもたちは班毎にパソコンに向かって自分たちの作品をチェックし始めます。小学6年生がパソコンで作るCMとはどんなものでしょうか、期待が膨らみます。

〈CM発表会〉

先生:「席に戻ってください。では、伝える方は街の良さを伝えられているか、聞く方は良さがよく伝わっているか、というところを見てください。後で、誰が聞かれてもよく答えられるように、よく見てください。」
最初の班がスクリーンの所へ出てきました。先生が手元でスイッチを入れると、前のスクリーンに画像が映し出されます。

1)「ゲートシティ」 男子1人、女子5人グループ
女子1:「大崎の飲食店の発表です。」

ケーキ屋さん、コーヒーショップ、コンビニ、ピザ屋さんの写真とその店の人気商品やトレードマークのピザ焼き釜などの写真が、ナレーションとともに次々と映し出されました。最後に、協力してくださったお店の名前や人々と、製作者の児童の名前が文字で表され終了です。この間、2分ぐらいでしょうか。次に、講評が始まりました。

意見1:「お店の人気商品を1つずつ挙げているところがよいと思います。」
意見2:「自分が知らない店もあったので、今度行ってみたいと思いました。」
意見3:「行ったことはあっても、人気商品までは知らなかったので、それを紹介したのがよいと思います。」

2)「大崎の飲食店」 男子3人のグループ
男子1:「大崎駅近くの飲食店についてです。」

バイキングの店、居酒屋さん、デザートの店、ラーメン屋さん、魚屋さんなど8店の写真が、店名とともに次々にめまぐるしく映し出されました。子どもたちからは口々に「はや!(早い)」の声が。製作者、協力者の名前もたちまち終わって、20秒ぐらいだったように感じました。

意見1:「知らないお店が一杯出てきて、知ることができました。」
意見2:「早すぎて直した方がいいと思います。1つ1つのお店の間を空けた方が見やすくなると思います。」
先生:「こうしたらもっと良くなるということを言ってあげるのはいいことですね。そういう意見もいいですよ。」

3)「シンクパークのお店」 男子5人のグループ
男子2:「僕達はシンクパークのお店です。」

文房具店とデジタルプリント屋さんの2店だけが、じっくりと映し出されます。店の中のあちこちのコーナーを写真にしており、ナレーションが「ここは何々をするところです」と解説しています。

意見1:「シンクパークの中に文房具屋があるとは知らなかったので、行って見たいと思います。」
意見2:「写真屋さんの中で写真が撮れることが分かりました。」
意見3:「妹が七五三の写真を撮ったときはまだ店が完成していなかったので、今回全部わかってよかったです。」
意見4:「シンクパークへ行ったことがなかったので、中を探検してみたいと思いました。」
意見5:「店の名前を言った方がわかりやすいと思います。ローマ字の店名が写されただけだったので。」

4)「大崎のお祭り」 男子3人、女子4人のグループ
女子2:「大崎のお祭り、明るく、楽しくにぎやかわっしょいです。」

この班はナレーションが消えてしまったということで、画像を見ながらアドリブで解説してくれました。付近の3つの神社の御神輿とそれを担ぐ人々など、祭りの夜の様子を写した写真が数枚ずつありました。

意見1:「お祭りに興味がなかったけれど、行ってみたいと思いました。」
意見2:「4丁目のおみこししか担いだことがなかったけれど、他のお祭りも行ってみたいと思いました。」

〈CMを作ってみての感想〉

先生:「残りの2グループは次回に発表してください。CM作りをした感想を振り返って言ってください。」
女子3:「1つ1つの(場面の)時間が短くて、ナレーションが追いついていないことがあるので、もっと(間を)長くした方がよいと思います。」
女子4:「考えたように作るのは難しいと思いました。お祭りの写真があまりなくて、出してくるのが大変でした。ナレーションも入れたいと思います。」
男子3:「音声がつっかえるので大変でした。」  

取材を終えて

 この授業は市民科学習ステップ5の「確認」の段階なので、この時間を見せていただいた限りでは、写真を子どもたちが撮ったのか、お店のホームページなどから出したのかわかりませんでしたが、よく編集されていました。6年生のメディアリテラシーは立派です。

 CM作りそのものもですが、それ以上に、授業で出た意見が素晴らしかったと思いました。「こうしたらもっと良くなる」ということを、先生でなく友達同士で言えるというのは非常に高いレベルですね。批評するだけでなく建設的な方向を示唆するのは、大人でも難しいことです。相手を理解した上で、相手の気持ちを損なうことのないよう、自分の意見を述べています。筋道が通り、建設的なので説得力もあります。法教育から見て、まさに理想的と言えます。小学6年生でそれができるということは、市民科の積み重ねが実を結んでいるということではないでしょうか。友達の意見を受け入れる方もしっかりとやってくれたら、言うことはありません。

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