さいたま市立蓮沼小学校 授業研究会①(授業編)
2009年10月6日(火)、さいたま市立蓮沼小学校の校内研修・授業研究会にお邪魔しました。
この授業研究会では、16日(金)に行われる研究発表会の準備の一環として、埼玉弁護士会の協力のもと、法教育の授業が行われました。
蓮沼小学校は法教育に取り組んで3年目ということです。公立小学校で明確に法教育を打ち出している授業を初めて見せていただくことができました。
蓮沼小学校プロフィール
1974年開校、創立36年を迎えました。さいたま市の北東に位置し、東武野田線七里駅から徒歩7分。近隣には見沼区役所、市職員研修センター、東図書館、武道館等の公共施設があり、緑豊かな落ち着いた教育環境です。
今年度は市・県教育委員会、文部科学省研究委嘱として道徳教育実践研究を重点としており、特別活動によるコミュニケーション力の育成に取り組んでいます。年間35時間の特別活動の実践研究、学級形成の重視を通し、豊かな心を持ってよりよい人間関係を形成する子の育成を図ります。(蓮沼小学校ホームページより)
児童数・学級数 (平成21年度学校要覧より)
学年 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | 特別支援学級 | 計 |
児童数 | 151 | 143 | 161 | 167 | 162 | 146 | 33 | 963 |
学級数 | 5 | 5 | 4 | 5 | 5 | 4 | 5 | 33 |
研究主題
「豊かな心をもってよりよい人間関係を築く子の育成」
蓮沼小学校における6年生の望ましい児童像は「信頼しあう仲間・役割を担う子」です。「法教育」の視点から、ルールや決まりを作って守る一連の活動は、友だちとの仲間意識を高め、信頼関係を一層深めていくと考えられます。それは新たな問題解決の方法・新しいコミュニケーション力を獲得することによって、よりよい人間関係を築くことでもあります。
授業の概要
特別活動(学級活動)“法教育” 場所 ふれあいルーム
題材名:「自分や学級における問題を“ルールや決まりを作って守る”ことによって解決していこう」
6年1組 (13:50~14:35) 37名(男子19名、女子18名)
6年2組 (14:45~15:30) 37名(男子19名、女子18名)
埼玉弁護士会より弁護士11名(男性7名、女性4名)
・事前活動
①学級活動アンケート・実態の把握
学級や学校における生活上の諸問題を明らかにするためアンケートをとり、実態を把握しました。
②アンケート結果の話し合いとグループ分け
総合的な学習の時間にアンケート結果の集計から話し合いをし、グループ分けをしました。グループ毎に「話し合いの柱」を立てました。
③司会、話し合いの流れを決める
給食の時間にグループ毎に司会者と当日の話し合いの流れを決めて、画用紙に書きました。
・10月6日の授業
クラスが6つのグループに分かれ、それぞれに1~2人の弁護士が加わって、問題解決に向けて話し合います。児童同士を中心に話し合わせ、弁護士は聞き役になったり、質問したりして、問題や課題を明らかにし、解決のためにどのような実践があるかを考えます。最後にワークシートに書き込んで、各グループの解決策を発表します。
1組は担任の導入の後すぐ話し合いを始めましたが、その後行なわれた2組の授業では、まず弁護士の先生もグループに加わってちょっとした手遊びをし、自己紹介の雑談を少ししてから話し合いに入りました。
話し合いのテーマ
1組は友達とのトラブルが起こった時の解決方法として、第一位に「あきらめる・がまんする」と答えた児童は男子6名、女子4名。「無視する」が男子6名、女子3名。「話し合う」が男子4名、女子5名。「暴力」が男子1名。問題が起こりそうになると、なるべくことが大きくならないうちに収めてしまおうという雰囲気が学級にありました。そこでテーマは、6つのうち3つがいじめに関するものでした。
①「自分を変える(1)」:面倒だから、興味がないからと思うことも、みんなのためになることなら頑張るようにするにはどうしたらいいか。
②「自分を変える(2)」:仲間はずれの人を入れてあげるにはどうすればいいか。
③「一歩前に」:声を掛けにくい相手にはどうやって話しかければいいか。
④「みんなに役立つ」:いじめられていたり困っていたりする友達のために、どうすれば助けることができるか。
⑤「中学校へ」:自分の時間の使い方を見直そう。
⑥「きまりを見直す」:学校でシャープペン禁止なのを変え、使えるようにするにはどうしたらいいか。
2組は1組と全く違い、「問題を思いつかない」という子が多く、皆が活発に発言する明るい雰囲気のクラスです。
①「なぜシャープペンを学校に持ってきてはいけないのか?」
②「なぜ学校は固形石鹸なのか?」
③「いじめられている人の気持ちをどう思うか?」
④「なぜ学校はランドセルでないといけないのか?」
⑤「なぜ学校に自転車通学できないのか?」
⑥「なぜクラス替えは2年に1度なのか?」
話し合いの結果
1組は、いくら司会者が頑張っても子ども達だけでは発言がほとんど出ず、弁護士が促すような流れにならざるを得ないグループが多かったようです。その中の1つのグループでは、弁護士の先生自身がいじめられたときの体験を、「いじめっ子がいない所ではみんな遊んでくれた。いじめる子以外が自分の仲間なら、怖くないと思った。」と、話してくれました。いじめ問題グループは、一様に、「自分以外の人もみんないじめは嫌だと思っていることがわかった。」という感想で、「自分一人ではできないけれど、友達と一緒なら声をかけたりできると思う。」という解決法が出てきました。
2組は、いじめ問題グループ以外はどこも、禁止されているものを学校で使えるようにしたいという気持ちで一杯なので、「ルールを作って自分達が守るから校長先生に許可してもらおう。」という解決法に落ち着いてしまいました。
後日、事後の指導として、個々の活動の意思決定と計画を発表し、グループ毎に協力してできることを話し合ったりする実践のための授業、振り返り等が予定されています。
この日は、この後、教員と弁護士が協議会を行い、活発な意見交換がされました。
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