さいたま市立蓮沼小学校 授業研究会②(研究協議会編)

さいたま市立蓮沼小学校 授業研究会①(授業編)からの続き

 2009年10月6日(火)の協議会は、授業研究会に参加した弁護士11名と青山学院大学法務研究科の久保山力也助教、春日部市立小学校、大利根町立小学校の教諭、蓮沼小学校校長今村先生、6年担任4名の出席で16:00から17:30過ぎまで行なわれました。

蓮沼小学校校長より

 弁護士さんからは提言を出していただき、より良い授業を作っていきたいと思います。弁護士さんには最終的に子どもの決定に対する価値付けをしていただきたいですが、途中の関わり方は難しいと思います。今年の授業では「書く」ことを通して児童一人ひとりの「自己決定」を明確にするよう改善してみました。
 2組は自分がどう実践するかという話し合いとは違い、校長に許可を求めるという方向となってしまったグループが多かったのですが、そこでどのようにして説得できるか等を考えることは有効であったと思います。

6年1組担任より

 6年生の法教育は3年目ですが、毎年クラスの子どもの雰囲気で全く違うものになるのが面白いです。1組の子どもは言葉に出すのが苦手なので、発言という形では出なかったもののワークシートには書きこんであります。具体的に何をするかまで行っていないので、目標を作らせて実行まで行きたいと思います。

6年2組担任より

 6年生を担任するのも法教育も初めてで、勉強になりました。子ども達は弁護士さんに親近感を持ったようで、時間が足りない、もう1時間話したいと言っていました。自己紹介で趣味を話したりしたのがよかったようです。

弁護士より

①テーマについて
・「自転車通学」のような、絶対認められない問題を話し合う場合は、大人の意図を見透かされ、「弁護士さんは自転車が使えない方に誘導しようとしている」と言われるのでやりにくいです。逆に、「リュックで通学」等、そうしてもいいと思えるようなテーマも、やりにくいと思いました。

・「2年に一度のクラス替え」については、どういう結論が出たときに解決というのか難しかったです。

・「時間を見直そう」は1人ずつ個別のテーマだったので、全員が共感して議論できなかったのが残念でした。

・「いじめ」問題は結論から先へ行くのが難しい。いじめている人を注意したくても、仕返しが怖いからどう実践するか、具体的になると難しいです。

・「いじめ」のような重いテーマは活発な発言がしづらいので、もう少しゆっくり皆の意見を聞いてもよかったと思います。2組は軽過ぎるテーマかと思います

・「学校はなぜ固形石鹸を使うのか」というそもそも論から始めましたが、「値段が安いから」ということに納得してしまって、先に進みませんでした。

このようなお話を受けて、学校側からは次のような意見が出ました。
・子どもにとっては身近な体験が重要であり、どんなテーマでも子どもが議論したいことが大切です。

・学級活動では自分が生活上困っていることを解決する方法を探り、決定します。そこに弁護士さんは「困ったことの解決のプロ」としてアドバイスしたり、子どもの考えた解決方法に価値付けをしたりしていただくのです。弁護士さんに入っていただくことの意味はここにあります。

さらに弁護士が以下のようにまとめました。
・中学生はルール作りが中心ですが、小学生には無理なところがあり、身近な問題が合っていると思います。

・テーマでは毎年揉めますが、子どものレベルでの悩み事・揉め事を解決していく際の援助を考えればいいと思います。

②少数意見、反対の立場からの視点について
・少数意見でもどういう点が良いところか。少数意見をどのように多数意見の中へ取り込むか、ということはまさに法教育です。それをコメントしてあげるチャンスがほしかったです。

・準備の段階で、自分の意見だけでなく、「反対の立場から考えてみる」ことを言っておいてくれるといいかもしれません。

・校長が「私を説得するには相当のデータが必要です。」と言ってくれたのがよかったです。そのおかげで、更に深く話し合おうとしました。

・解決ではなく「そもそもなぜそういうルールがあるか」という話し方もあります。

③授業の進め方について
・最初にグループで自己紹介の雑談をするのは緊張が解けていいです。座り方は弁護士も児童の中に入って丸くなるように。

・最後にワークシートを書く時間がありましたが、その間弁護士がただ待っているのはもったいないので、書くのは短くして、「価値付け」をコメントしてあげる時間がほしかったと思います。個別にグループで語りかけることをしたいです。

これらを受け、校長先生が改善策として「担任が授業をいったん締める。後はグループ毎に弁護士さんがまとめて、授業を終わらせるようにしましょう。」とまとめました。

青山学院大学久保山先生のコメント

・「主体的な行動」という意味を考えさせられました。「ルール作り→新しいルールで解決→校長先生(権威者)に頼む」となってしまう点をどうするか。「解決」の前で立ち止まって、自分ができる行動の最大限の価値を考えることが必要かと思います。

・「弁護士とのコラボレーション」はグループ毎に違います。「相談する」ことに価値を見出すことは良い点です。テーマは何であれ、弁護士が解決方法の多様性に関する話に持っていく、相談ツールに気付かせるという方向に行ければいいと思います。

小山弁護士の補足

 「権威者である校長先生に頼む」ということを法教育的に考えるならば、「校長先生と対話する」ということです。校長の話を傾聴する。それを踏まえて、子どもたちはどのようにして校長を説得するか。子ども・校長がそれぞれ合意形成に向けて対話を繰り返す。校長を説得するために、こんなルールを作るからどうですかと子どもが合意形成を目指して対話することは、十分に法教育であると思います。

今村校長の補足

 教育課程にある特別活動。そしてその中の「学級活動」で「法教育」はしっかり位置づけることができます。学級活動にはこのような活動の他に「学級会」がありますが、そこでの話し合いも正に「法教育」そのものです。様々な意見を出し合い、最終的に折り合いをつけていくという「学級会」を法教育としてどのように位置付け、指導していくのかは今後の課題です。

取材を終えて

昨年度、一昨年度の実践を振り返りながら10日後の研究発表会に向けて、学校側と弁護士さんが真摯な議論を交わし、より良い法教育の授業を模索していることがよくわかりました。授業実践の上で参考になることが多いのではないでしょうか。

次回は、2009年10月16日に開催された「さいたま市立蓮沼小学校研究発表会」のレポートをお送りします。

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