さいたま市立蓮沼小学校 研究発表会③(シンポジウム編)

さいたま市立蓮沼小学校 研究発表会②(分科会編)からの続き

 15:20~16:45、体育館にて全体会・シンポジウムが開かれました。6年生児童代表と文部科学省調査官の質疑応答という斬新な展開に、会場は時々笑いも誘われる興味深いものでした。
テーマ「特別活動で培われる道徳性」

6年生児童代表と杉田調査官・赤堀調査官の質疑応答

参加者:文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官 杉田洋先生、赤堀博行先生
児童会役員の6年生4人
司会:大室健司先生(蓮沼小学校 研究推進委員)

① まず、今の6年生に昨年度と今年、学校がアンケートした結果が報告されました。「学級会は好きですか?」の問いに、「大好き」と答えている児童は多少増えていますが、逆に「好き」は約5%減り、「嫌い」が約5%増えています。ぜんたいとして「嫌い」が増えていますが、その理由は「意見を言うのが恥ずかしい」、「意見を言うのが嫌だ」、「言いづらい」などです。
「互いに信頼し、学び合って友情を深め、男女仲良く助け合っていますか?」という問いには、「十分できている」、「ほぼできている」が増え、「ややできていない」や「全くできていない」は大幅に減っています。男女差別なく、仲が良く、よい結果でした。

10② 次に、杉田先生からの質問に子ども達が答えます。
「本当に学級会は好きですか?」
 →4人とも挙手。
「友達って嫌だと思ったことのある人」
 →全員挙手。
「『公平』は意外と難しいですが、なかなか公平にできない人」
 →全員挙手
「自分は高学年として役割を果たしていると思う人」
 →男子1のみ挙手。
「自分が好きな人」
 →全員挙手。
「自分にいいところがあると思う人」
 →全員挙手。

「友だちは大切だと感じるのはいつですか、男子2君?」
 →男子2:「運動会のリレーのとき、クラスの仲間が応援すると速くなるときです。」

「協力するのは大切だと心から感じるときはいつですか、男子1君?」
 →男子1:「体育では始めに校庭を5周走ることになっています。1人遅い子がいると、先に終わった子が一緒に走ってあげるときです。」

「『男女協力』を感じるときはいつですか、女子さん、男子3君?」
 →女子:「蓮沼小フェスティバルでお店を開くとき、男子は集めたり動いたりすることを早くやってくれます。女子は飾りつけ。それぞれ能力を生かして協力すると、うまくいきます。」
 →男子3:「男子は力仕事、女子は繊細なきめ細かい作業が向いています。」

「本当は嫌なことはありませんか?」
 →男子3:「男子の細かいことに女子がいろいろ文句を付けてくるところ。」
 →女子:「女子が一生懸命しているのに、男子がうろうろしていること。」

「『信頼する』とはどういうことですか?」
 →女子:「やらなくてはいけないことがあるときに、頼みごとができる人が信頼できる人です。」
 →男子1:「相手の気持ちを理解している人。」
 →男子2:「一緒に遊ぶだけでなく、相手の気持ちを理解している人。」
 →男子3:「人を注意するとき、注意しても嫌われないと信じていないと注意できないので、注意をしてくれる人。」

「下級生のお手本になるように、今自分が一番頑張っていることは?」
 →男子3:「学校の規則を守ることです。」
 →男子2:「授業に臨む態度、挨拶です。」
 →男子1:「挨拶です。」
 →女子:「いろいろな人に声をかけて何かすることです。」

③赤堀先生から子ども達への質問
「学級会のいろいろな活動で、みなさんはどんなところが成長しましたか?」
 →女子:「自分の意思表示がはっきりできるようになりました。
 →男子1:「人の考えることを想像して行動することが、遊びのときもできるようになりました。」
 →男子2:「自分が、だけでなく他人のことも考えて意見を言えるようになりました。」
 →男子3:「友達の好きなことなどを考えるようになりました。」

「先生のアドバイスやお話で参考になったことは何ですか?」
 →男子3:「挨拶は笑顔でするということ。」
 →男子2:「みんなのことを考えて行動すること。」
 →男子1:「自分の意見ばかり言わず、皆の意見を入れて折り合いをつけること。」
 →女子:「1つの議題に対し、いろいろな意見があること。」

「学級会以外で好きな活動は何ですか?」
 →女子:「はすのみ学習(総合的な学習の時間)です。伝統工芸とかバリアフリーとかの調べ学習をします。」
 →男子1:「体育と社会です。」
 →男子2:「はすのみです。海外に目を向けたり、いろいろなことを学べます。」
 →男子3:「体育です。」

「クラブ活動は好きですか?」→全員挙手

④司会者が道徳の教科書や特別活動で役に立ったことは何か、質問しました。
 →男子3:「転がっている空き缶を拾わないと気分が悪くなった話を読んで、自分も拾いました。」
 →男子2:「おばあさんを助けてあげる話。」
 →男子1:「怪我をしている人を助ける話で、とにかく助けてあげたいと思いました。」
 →女子:「体の不自由な人の物語やテレビを見て、はすのこ学級(特別支援学級)の障害の人たちとも助け合いが大切ということを学びました。」

杉田先生・赤堀先生の対談

杉田先生:「蓮沼小の子ども達をどう感じられましたか?」
赤堀先生:「今学力に関心が向いていますが、蓮沼小は、道徳や特別活動に真剣に取り組んでくれていることに敬意を表します。」
杉田先生:「特別活動における道徳教育の研究課題はどんなことですか?」
赤堀先生:「当該学年の課題は何かということを押さえることです。「道徳」時間以外の道徳指導は何か、把握してください。」
杉田先生:「道徳活動の切り口は何ですか?」
赤堀先生:「今日の学習指導案綴の1年5組のところ、2の(4)にあるように、活動題材の「道徳的実践としての意義」の認識を指導する側がもっているかが大切です。「意識して指導に当たりたい道徳の内容」、「その他関連の深い道徳の内容」など、認識をもっていないと子どもへの伝わり方が違います。例えば、学級会も議題で道徳とのかかわりが変わりますし、意見が出ないときなどの先生の態度・かかわり方が感化となることもあります。」
杉田先生:「道徳と特別活動の関連について、そのあり方はいかがですか?」
赤堀先生:「道徳の時間は特定の教育活動の準備の時間ではありません。子どもの体験を活かす時間です。子どもの共通体験・思いを道徳の時間に活かす。決意表明の時間ではなく、自然にですね。関連を図るのは大事ですが、図り加減が重要です。」
杉田先生:「会場の皆さんからご質問は?」→ありませんでした。
杉田先生:「赤堀先生ご自身はどんな子どもでしたか?」
赤堀先生:「港区の小学校で、担任が都の小学校特別活動会長でしたので、子どもの頃から特別活動に慣れていました。」
杉田先生:「『心のノート』の特別活動における活用の仕方は?」
赤堀先生:「あらゆるところで活用できます。今年度改定され、8月に『活用の手引き』を全国の先生にお配りしましたが、もう届いたでしょうか?ぜひご活用・参照してください。」

杉田先生より本研究総括

・(今日杉田先生が撮影された児童の写真を映し出しながら)特別活動は生活を対象にしています。この学校の児童は一旦廃止になったブランコを、自分達の力でルールを作って取り戻しました。生活が教育の対象ということであり、研究発表会もチャンスということです。
・今、学級会では折り合いを付けるより以前に、自分の意見を言えない子どもが多いのが課題です。自己中心の子どもと迎合する子どもの二極化で学級会になりません。蓮沼小学校のように、学級のために真剣になれる子どもは素晴らしいです。
・どの授業も皆温かいのが大切ですが、特別活動の目的は望ましい集団活動を通して心を育むことです。より良い生活や人間関係を築こうとする自主的活動・実践を行なってください。
・道徳の目標は「自己の生き方についての考えを深める」ことであり、特別活動も同じです。
・「空気の教育力」というものも重要です。教師の背中・指導方針と指導、子どもの意識・主観を大事にするデータの重視、学校・教室の掲示物などの環境といったものです。
・Yes,I can.とYes,we can.の話し合いが大切です。

終わりに

 この研究発表会では、6年生が受付から始まって会場の至る所で案内役をしてくださり、目を合わせて気持ちの良い挨拶をしてくれました。子ども達を主役にしようとする主催者側の心がとてもよく伝わってくる発表会でした。

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