千葉家庭裁判所「裁判官と一緒に考える少年審判」その②

千葉家庭裁判所「裁判官と一緒に考える少年審判」その①の続き

3 重大な犯罪を犯した場合

問題4:少年は何人も人を殺しても死刑になることはないと考えますか?
   →14歳未満は刑事裁判にかけられないので、殺人罪は成立しません。ですから死刑になりません。14歳以上の場合、犯行時18歳未満は少年の刑事事件の特則により刑の緩和があり、死刑とすべき場合は無期刑になりますので、死刑になりません。犯行時18~19歳は死刑になることもあります。

4 犯罪などを犯していないが、犯罪などを犯す一歩手前まで来ている場合(ぐ犯)

問題5:少年は犯罪などを犯していなくても、家出を繰り返すなど乱れた生活を続けていると、家庭裁判所で処分を受けることがありますか?
   →あります。家裁の処分は教育的措置ですから、早期発見・早期治療が大切です。ぐ犯という制度があり、少年の適切な保護と指導を行ないます。そこで処分を受けることがあります。

5 14歳に満たない少年の場合

問題6:小学生は殺人事件などの重大な犯罪を犯しても、家庭裁判所で処分を受けることはないでしょうか?
   →あります。14歳未満の触法行為は児童福祉機関の措置が優先されるので、通常は児童相談所に先に通告され、その事件が児童相談所から家裁へ送られてくれば、家裁で審理します。前に全件送致と言いましたが、まず警察から児童相談所へ行く例外もあるということです。

最後に

 少年非行は社会の一側面を敏感に反映しています。社会全体の規範意識の希薄化が少年に悪影響を及ぼしていると思われます。したがって社会全体の対策が必要です。幼児期からの家庭のしつけ、公教育の改善が最も大切です。家裁の措置は対症療法のようなもので、予防が第一です。その方がはるかに効果的なはずだと思います。家庭・学校・地域で規範意識・基本的生活習慣を身につけさせましょう。

〈参加者からの質問〉
1:少年審判手続きで事実関係が争われるようなとき、非行事実の認定は大変ですか?
→平成12年法改正で、重大な事件は検察官関与が可能になったので、大丈夫です。

2:付添人を付けるケースはある程度決まっていますか?
→保護者が弁護士に頼む事件もありますが、検察官関与事件など重大な事件では国選付添人を付けられるようになり、付添人が付くケースが増えてきています。 

3:少年の更生率はわかりますか?また、冤罪事件はありますか?
→再犯率ということになりましょうが、具体的なものはわかりません。8割は家裁に来ることはないという見解もあるようです。ただ、例えば家裁で措置等を受けた少年の年齢が19歳だった場合、成人に達すれば家裁に来ることはありませんから、そういった意味でも数値を出すのは難しいです。冤罪は聞いていません。

4:学校は保護観察官・保護司と積極的に連絡を取り合うべきですか?
→少年の保護・教育のため大切なことだと思います。ただ、保護観察所の管轄ですから、裁判所は直接には口を出せません。

5:付添人の弁護士の効果はいかがですか?
→試験観察中の少年のために弁護士が住み込みの就職先を見つけ、生きる方向性をつけてあげたこともあります。作文を書かせたり、いろいろな場面があり、その面では弁護士は裁判所の協力者として少年審判を支えてくれています。

6:中学校教員が少年に金属バットで殴られた事件がありましたが、どんな処分になりますか?
→具体的にどの処分になるかはここでは言えません。

7:保護者に対する教育的なものはありますか?
→「本当に悪いのは少年か?親ではないか」と思う事件はあります。平成12年法改正で、保護者に対する措置ができました。少年法第25条第2項、「少年の監護に関する責任を自覚させるため」、訓戒、教育的措置の指導等があります。

 参加者からの質問は、それぞれの分野で日々少年と向き合う方々の声であろうと感じられ、少年の問題に真摯に取り組む地域社会の存在を実感させられました。この現場の声というべきものが、法教育にどう生かされるかということが重要だと思います。

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