千葉大学教育学部附属小学校第43回公開研究会①授業編
2010年2月4日(木)、5日(金)の2日間にわたり、西千葉の千葉大学教育学部附属小学校で公開研究会が行なわれました。「学びを深める授業―言語活動と体験的な活動を重視して―」を研究主題に、全教科・特別活動・給食にわたって研究がされています。北海道から沖縄までの多くの参観者を集め、盛大な会でした。その中から道徳と社会の学習展開と、全体会・分科会の模様をお伝えします。まず、1日目の道徳の授業編です。
千葉大学教育学部附属小学校のプロフィール
昭和41年、千葉大学教育学部附属第一小学校及び附属第二小学校が統合し、千葉大学キャンパス内の現校地に開校しました。キャンパスには附属幼稚園、附属中学校もあり、連携がスムーズです。JR西千葉駅、京成みどり台駅から徒歩約10分という好立地ですが、周囲は落ち着いた住宅街の文教地区といえます。
児童数 1クラス定員40名(男女各20名) 1学年3学級ずつ18学級 全723名
他に定員15名の帰国児童学級 3学級 全19名
2年1組 道徳
2月4日(木)9:00~9:40
場所 心理劇室(板張りの床の小さめの部屋で、ステージとホワイトボード、丸椅子40個があるのみ)
主題 きまりってなんだ!? 4-(1)規則尊重
研究テーマ 学校のきまりの意義をより実感していくためにはどうしたらよいか
授業者 村田正実 教諭
手法 ロールプレイング
〈授業開始前〉
先生がワークシートを配り、名前を書いておくように指示します。子ども達は各自、画板のようなものを首から掛けてきていて、その中から鉛筆を取り出しワークシートを書きます。子ども達は班毎に固まって座っており、10班あります。
〈資料「ひみつのさくせん」を読むことから始まり〉
先生:(いきなりプリントを配りながら)「では今日の文を読みますので、みんなはプリントを目で読んでください。」
ひみつのさくせん (自作教材) |
2年1組のみんなは、あしたの「2年生ドッジボール大会」にむけて、今日も放課後練習をしていました。少しずつ上手になっていくみんなを見て、リーダーも副リーダーも余計に頑張ろうと思いました。 リーダー「よし!今の調子なら、きっと優勝できるね!」 副リーダー「そうだね!あともう少し!1組の秘密の作戦もいよいよ完成だね!」 練習してきた「1組秘密作戦」はとてもよい作戦で、それがもう少しで完成するのです。みんなの心も1つになっていきました。とうとう完成というそのとき、3時50分の帰りの音楽が流れてしまいました。もうグランドにいてはいけない時間です。そんな時、副リーダーがみんなに向かって言いました。 副リーダー「帰る時間になったので練習は終わりだよ。」 それを聞いたリーダーは、 リーダー「もう少しだけやろうよ!みんなの心も1つになっているんだし。あと少しで秘密の作戦も完成できるんだよ!」 と言いました。 |
読み終えた先生は内容の確認のため、次々と質問を繰り出しました。誰かを指名するというより、みんなに向かって訊き、子ども達は着席したまま口々に応えていきます。「誰と誰が出てきますか?」「今何時ですか?」「リーダーはそのときなんて言ってましたか?」「副リーダーは?」「なぜリーダーはそう言ったの?」子ども達は的確に答えていきます。
〈問題の提示〉
先生:「副リーダーは帰ろうと言ったのはなぜですか?」
みんな口々に:「時間だから。音楽が鳴ったから。」
先生:「なぜ音楽がなるの?」
みんな:「きまりだから。」
先生:「そうだね。どっちもわかる。きまりも大事、もう少し練習したいのも大事。あなたならどっちにしますか?リーダーに賛成でもいいし、副リーダーにでもいいし、もっといい考えでもいいです。ワークシートの①「あなただったらどうしますか?」というところに書いてください。できれば理由も。」
先生は子ども達が書いているのを見て、ロールプレイングをしてもらうのによさそうな意見の子どもを2人、指名しました。
〈リーダー役と副リーダー役のロールプレイングその1〉
先生:「ではトップバッターお願いします。」(男子2人が自分の椅子を持ってきて舞台に上がります。)「自分の考えでいいよ。スタート。」
副リーダー役:「もう時間だから。」
リーダー役:「明日はもう大会だし、ちょっとならいいでしょ。」
副リーダー役:「先生に怒られちゃう。」
リーダー役:「先生にもうちょっとって言おう。」
副リーダー役:「それならいいよ。」
先生:「はい、拍手。」
すぐに見ていた子ども達が意見を言い始めました。
男子1:「(放課後練習を延長してもらうことは)先生がいいと言っても、(下校時刻は)学校中が決めたことだから(変えられない、守らないといけない)。」
男子2:「いい計画ができなくて、せっかくもう少しなのに、勝てないかもしれないから(もう少し練習していいと思う)。」
みんな:「もっと突っ込んでほしい。」
〈ロールプレイングその2〉
先生:「では次の人お願いします。質問や気づいたことは終わってから発言してください。」
副リーダー役:「学校の決まりじゃん。」
リーダー役:「学校から出て公園や野原とかでやればいいでしょ。」
副リーダー役:「習い事とかしてる人がいるかもしれないし、時間に帰らないと心配されるかもしれない。」
リーダー役:「それで負けたらどうするの?」
副リーダー役:「しょうがないよ。(きめられた)時間があるもの。他のクラスも同じ時間帯に練習してるんだし。やめるしかない。」
リーダー役:「・・・」(言い返せなくなりました。)
先生:「拍手。みんな、なるほどって思った?」
男子3:「それで負けたりしたら悔しいから、ちょっとぐらいやってもいい。」
先生:「でも他のクラスと同じでないとずるいとじゃんて人もいるね。」
女子1:「一回帰って、公園でやれば?」
男子4:「公園でいいの?塾とかすぐ行くならできないよ。」
先生:「公園でやればいいって、(リーダーも副リーダーも)どっちも言いそうだと思わない?」
女子2:「当日の朝やればいいと思います。」
男子5:「でも遅れる人がいたらできない。」
男子6:「無視すればいい。」
先生:「無視ってかわいそうでしょう。」
男子7:「朝やって同じことなら諦めるしかないと思います。」
〈どうしたらいいか、班毎に話し合い〉
先生:「意見が全然違う人がいるのでどうしようか。ちょっとグループで話そうか。一回みんなの意見を聞いて、自分の頭を整理して。発表してない人の意見はわからないから、まずよく聞いてください。話を聞きながら、ナイスアイデアと思ったら、ワークシートの②に書いてください。3分ぐらいで。始め。」
〈班の意見発表〉
先生:「では前を向いてください。グループ代表の人、どんな気持ちになったか発表してください。なかなか意見合わないでしょう?何と何で悩んでいるか教えてください。」
1班:「時間を守った方がいいと思います。」→先生:「なぜ?」→1班:「怒られるから。」
男子8:「絶対無理。怒られたってべつに、明日勝てればいい。」→先生:「負けてもいいじゃない?」→男子8:「だめだよ!」→先生:「負けるかもしれないし。」
2班:「優勝しても何も貰えないから負けてもいいと思います。」→先生:「じゃ、リカちゃん人形貰えたらどうする?」
3班:「残りたい。」
私語が多くなりますが、先生は静かになるまで「もう少し(静かになるまで待って)」と言って、班の代表者の発言を待たせます。するとだんだん静かになります。先生は終始笑顔を絶やさず、辛抱強く進行役を務めます。
5班:「先生に言って校庭でやらせてもらう。」
先生:「どっちかっていうとリーダーに近い人、手を挙げて。」→少なめ。「副リーダーに近い人?」→やや多い。
男子8:「俺達は何か貰えるためにやってるんじゃない。楽しいから。」
〈話し合って自分の意見は変わったか、ワークシートに記入〉
先生:「だから勝ちたいんだね。では、ワークシートの裏面、開けてください。③は①と同じ質問だけれど、意見が変わったり理由が増えたりしたら一杯書いてください。同じでもいいから、話し合って変わったことあるでしょう。」
口々に:「理由なし!」
先生:「でも頭の中にはあるでしょう?」
〈2回目の意見発表〉
女子3:「他のクラスも時間どおりだから、副リーダーの意見がいいと思います。自分だけ残るのはずるい。」
男子8:「でも必ず帰らなければいけないわけじゃない。」
先生:「帰らなくていいの?」→口々に:「帰らないといけない。」
男子8:「校長先生に頼んで帰りを遅くしてもらえばいい。」
男子9:「お母さんが心配するし、習い事とかある人もいるかもしれないから。」
先生:「塾とかあるから。」
男子8:「塾がある人はすぐ帰ればいい。」
先生:「きまりを守るっていうのは意味があるかな?」→口々に:「ある!」
先生:「帰りが5時ぐらいになったら?」→口々に「殺されるかもしれない。」
先生:「ああ、不審者とか。なるほど、やっぱりきまりどおりに帰らないとという意見になってきたけど、ワークシートの④に考えたことを書いて、今日は終わりです。」
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