法教育推進協議会傍聴録(第20回)

 今回は、去年の6月から今年の4月の間に行われた3回の法教育推進協議会の様子をお伝えいたします。

 2009年6月8日(月)、第20回法教育推進協議会が開かれました。

法教育推進協議会とは

法教育推進協議会は、2005年に法務省が発足させた会議で、我が国の学校教育等における司法及び法に関する学習機会を充実させるため、学校教育における法教育の実践、教育関係者・法曹関係者による法教育についての取組などに関する情報交換や、今後のあり方について検討を行っています。
委員は、教育関係者、法曹関係者、ジャーナリスト、その他の有識者などで構成されています。

小学校教材作成部会の報告

小学校教材作成部会による約2年間の検討成果として3つの小学校向け教材例作成案を含めた報告がありました。
教材案作成の方針として、児童に法やルールの必要性やありようを理解させるため、作業的・体験的な活動を通じて日常生活や遊びの中からルール作りをしていくという実践形式を旨としていることから、いずれの教材も指導用資料やワークシート等が豊富に盛り込まれています。
これまで現場の法教育は、小学校6年生の3学期に機構図の説明をする等といった簡単なものだけで終わりになりがちでしたが、先頃、裁判員制度がスタートしたこともあり、児童に日常と司法とのかかわりを具体的に考えさせたい、という意図の下に作成されています。

教材例①

「もめごとの解決と国民の司法参加・ルール作り」(6年生向け)

【1時間目】

裁判所のはたらきと裁判に関わる人々についての基本的知識の学習。

【2~4時間目】

学校生活における身近な紛争を題材に、ロールプレイングを行い、もめごとについてみんなで考えて解決することの意義を考えさせる。

【5時間目】

これらを踏まえて学級のルール作りを行うことを通じて、ルールが自分たちの生活を向上させる機能をもつものであることを実感させる。

教材例②

「情報化社会を生きる – 情報の受け手・送り手として」(5年生向け)

【1時間目】

架空の王国を設定して、情報が制限されることから生じる不便や不都合を具体的に考えさせることにより、情報を自由に得られることの意義を理解させる。

【2時間目】

児童が普段から行っている様々な表現活動について振り返り、思ったことを自由に表現できることの意義を理解させる。

【3時間目】

これらを踏まえ、身近な題材を用いて、インターネットを利用して情報を発信する際に気をつけなければならないことについて考えさせる。観点として、表現の自由の意義を中心とするものと、プライバシーの意義を中心とするものの2パターンを用意。

教材例③

「友達同士のけんかとその解決」

【題材1】

「けんかの解決方法を考えよう(交渉編)」
マンガの貸し借りがもとで起こったけんかのシナリオでのロールプレイングを行い、班別にけんかの解決に向けた当事者間の交渉を行わせる。
対立=悪ではなく、対立を解決することの重要性と、感情的対立の中で問題解決のためにはどのように振る舞うべきかを実感として理解させる。

【題材2】

「けんかの解決方法を考えよう(調停編)」
題材1と同じ事例を用いて、当事者間の交渉ではけんかを解決できなかった場合を想定し、調停人を交えてロールプレイングをした上で、班別にけんかの解決未向けた協議を行わせる。

【題材3】

「生活におけるけんかとその解決方法」
題材1及び2における学習を踏まえて、これらを実際の生活に生かせるよう考えを深めさせる。

委員からの意見

今回の報告に関し、委員からさまざまな意見が出ました。
「個別の教材例の作成に際しては、教育関係者側から見る場合の意図と法曹関係者側の意図がお互いにわかるようにし、整合性を図ることが重要であろう。」
「教材づくりのポイントとして、子どもが実感としてわかるもの、ということを目指していると思うが、小学生なりに法の意義を考えるのか、あるいは、中学につなげる体験を与えるのか、その点をしっかりと考慮したい。」
「法曹関係者からのアドバイスとして、法的意義など少し法的に色づけしてくれると学校の先生方もやりやすいのではないだろうか。」
「現場教員はカリキュラムとして位置づけられていないとできないということがあります。法のプロの方には、小学校段階でこれだけはという点を教えていただきたいです。」
「日弁連としては、現場の先生はどこにつまづくか、バックアップしたいので教えてください。」

取材を終えて

 小学校向けの教材作りに関して、法曹関係者・教育関係者、双方の方々が熱心に取り組んでいることが伝わってきました。法教育の推進に向けて、協議会の活動は続きます。

2010年2月に開催された第21回法教育推進協議会の報告に続く。

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