日本公民教育学会第21回全国研究大会

*期日 2010年6月19日(土) *会場 京都教育大学 藤森キャンパス
*大会テーマ 「公民教育と関係諸領域の教育の連携と独立」
標記の研究大会に参加しました。ここでは発表のうち法教育に関するものを報告いたします。自由研究発表のうち第6分科会の2件が法教育に関するものでした。

プログラム

Ⅰ「法やきまり」に対する理解を深めるためのカリキュラムの開発
―法教育の第一歩は小学校スタートカリキュラム(学校生活のきまり)からー
伊東富士雄(玉川大学)・平本茂(東京都東大和市立第二小学校)

Ⅱ高等学校公民科における法教育カリキュラムの全体構想
―東京都高等学校法教育研究会の議論を手がかりとしてー
渥美利文(東京都立小岩高等学校)・太田正行(東京都立工芸高等学校)

いずれも学校における法教育のカリキュラムに関する研究であり、Ⅰが小学校1年生、学校生活スタートの時点での法やきまりに関する教育の実践発表であり、Ⅱは学校生活最後となる高等学校における法教育に関するカリキュラム開発であった。

Ⅰ「法やきまり」に対する理解を深めるためのカリキュラムの開発

Ⅰでは、小学校生活の「スタートカリキュラム」として、学校生活のきまりを入学式直後に「国語科」「生活科」「学級指導」などで理解させる実践であった。きまりを「個別的な生活のきまり」と「集団的な生活のきまり」に分け、前者は、朝の挨拶や返事の仕方、学用品のしまい方、机やロッカーなどの使い方、いすの座り方や鉛筆の持ち方など今後必要とされる生活・学習習慣について、後者は、登下校の仕方と時間、靴箱やトイレの使い方、チャイム着席、廊下の歩き方や校庭の使い方、休み時間の過ごし方など、そして「友だちとのかかわり方」として、「呼び捨てにせず君・さんをつけて呼ぶ」「チクチク言葉」でなく「ふわふわ言葉」で、遊具等はゆずりあって使うなどを理解させる。「みんなで守ろう4か条」として、①チャイム着席、②授業中のおしゃべりをやめる、③手を挙げて発言する、④学習に関係ないものは持ってこないというものであったが、これは私たちが日ごろ接している中学生や高校生にも十分当てはまる「きまり」だと感じた。

Ⅱ高等学校公民科における法教育カリキュラムの全体構想

Ⅱでは、高等学校の法教育における「法」の内容領域を明らかにしつつ、公民科における法教育のカリキュラム開発を通してその全体像を構想する研究であった。高等学校商業科「経済活動と法」の目標や教科書の目次を参考にしつつ、学校設定科目として「市民生活と法」のカリキュラムが提示された。これは、発表者らにより構成される東京都高等学校法教育研究会により作成されたもので、今まで学習してきた日本国憲法を「すべての法教育の内容的基盤」と位置づけ、「法とは何か」を導入とし、刑事法、民事法、労働法・社会保障法、そしてまとめとして市民参加の法という法領域を含んだ体系的なカリキュラムを発表した。今後の内容構成、教材作成、指導法の工夫など今後の研究に期待したい。

おわりに

この研究大会では、シティズンシップ教育に関する研究発表が目立ったが、法教育についても、紹介された海外の理論や実践事例をいかにわが国の学校における授業実践に取り入れていくかが私たちの課題であると感じた。

〔原稿執筆:太田正行(東京都立工芸高等学校)〕
ページトップへ