NHK「特報首都圏」“選択的夫婦別姓制度”~法教育素材の紹介2

 2010年4月9日(金)、19:30~19:55のNHKテレビ「特報首都圏」で選択的夫婦別姓制度についての報道がありました。昨年度の法教育レポートでは選択的夫婦別姓制度を授業で扱った中学校も取材しました。法教育の興味深いテーマになりうるのではないかと思います。

夫婦の姓の現状

 NHKの調査では、婚姻届を出した結婚のうち97%は女性が姓を変えているそうです。一方、事実婚ではもちろん旧姓のままということになります。

選択的夫婦別姓制度への賛否

 アンケートからは、「選択的夫婦別姓制度に賛成」は29%、「反対」が32%、「どちらとも言えない」が34%だそうです。
 街頭インタビューでは、賛成の意見として「仕事をしている女性は名字が変わるとやりにくいでしょうね。」「別姓にするかどうかを選べるのはいいのではないか。」というものがありました。反対の方は、「子どものことを考えると反対です。」という意見でした。どちらとも言えない意見としては、「同じ名字でないと夫婦という感じがしないけれど、自分の名字を変えるのも寂しい気がする。」というものがありました。

根強い反対も

 選択的夫婦別姓制度に根強い反対もあり、先日は東京で開かれた反対集会に5,000人の参加者が集まり、「家族関係に悪影響を及ぼす」「日本社会の伝統的価値観が壊れる」といった危惧が表明されたということです。
 「子どもの心を不安定にしないか」という意見の女性も番組に登場しました。その女性の小学4年生と2年生の子ども達がそれぞれ、父親と母親の名字が違ったら「寂しい」「恥ずかしい」「不安な気持ちがする」などと言っていました。

賛成の人の例

 夫婦が別姓でも家族の絆はゆるがないという人も登場しました。3人の子どもは夫の名字で、自分だけ結婚前の姓のままという女性です。子どもには繰り返し、自分の名字への思いを伝えてきたそうです。中学か高校生ぐらいの年齢の子どもさんが、「母親と姓が違っても気にならない。姓を変えたくないという気持ちもわかる。」と言っていました。夫の母親に当たる人も、「最初はともかく、ずっと暮らしてみると生活の中で人間関係が別段崩壊したりはしません。家族同士の係わり合いで、家族は維持できます。」ということでした。

長谷川三千子 埼玉大学教授のお話

 民法は「家族をどう考えるか」というコンセプトを表現することを求められる法律です。今の制度を崩したとき、将来にどのような有形無形の影響を及ぼすかが見えないのが怖いところです。氏名は個人の持ちものと勘違いしている方もおられますが、姓はその人が誰のところに生まれ育ったかを表すもので、個人の権利ではないと考えることもできます。

NHK解説者のコメント

 選択的夫婦別姓制度に反対の人は、理由として「結婚、子育てに対し無責任な社会にならないか、子どもが不安定にならないか」ということを挙げています。一方、賛成の人は、結婚や子育ての責任、子どもの心といったものは名字とは関係ない、別の問題と考えているようです。

歴史的経緯

1954年 法制審議会で選択的夫婦別姓制度が取り上げられる。
1996年 民法改正要綱が答申される。
    (男女雇用機会均等法から10年の節目)
国会では度々廃案になってきました。アンケートでは賛成の人は1996年に約33%だったのが、2001年には40%台になりました。反対は1996年に約40%でしたが、2001年に約30%へと逆転。しかし、2005年に賛成反対共に35%ぐらいとなって以降、近年はあまり差がない状況だそうです。
 その理由としては、現状を変えることに対する拒否反応があるのではないかと考えられるそうです。徐々に、「通称使用でいいではないか」というムードがあるということです。
けれども、金融機関では犯罪予防のために戸籍名のみしか使用を認めないところが多いという例もあります。通称使用には様々な問題があり、限界があると指摘されています。

弁護士のお話

 夫婦が同姓であることを強制するのは、人格権を侵害している怖れがあるでしょう。選択的夫婦別姓制度はどちらの姓を選ぶか選択肢を増やすという制度ですから、反対する理由はないのではないかと考えられます。

墓石の例

 多様性を認めようというお墓の例が取り上げられます。従来のような墓石が立ち並ぶお墓ではなく、広いスペースに大きな石が置かれ、その石に共同で全員の名前が書かれています。「墓を継ぐ」という制度がなければ、もっと自由になるとも解説されていました。

NHK解説者のまとめ

 夫婦の姓のあり方は、家族というものをどう考えるかによるということでしょう。

放送を見て

番組中のインタビューでは、自分が臨終間近になったら離婚届を出してほしいという主婦も登場し、姓に対する思い入れはいろいろあると感じました。
 選択的夫婦別姓制度は、中高生くらいの年齢であれば、両親の姓が違う場合の子どもの立場にもなれるし、自分が将来結婚するときの立場にもなってみられるので、実感を持って民法を考えるきっかけとなるのではないでしょうか。アンケートで賛成反対が同じ位の割合なのも、議論を盛り上げるのに好適な話題と考えられます。
 

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