法教育インタビューシリーズ(4) 横浜市立港中学校副校長 鈴木浩先生

 2011年4月27日(水)、横浜市立港中学校副校長の鈴木浩先生をお訪ねしました。
 鈴木先生は歴史がご専門の社会科の先生で、横浜弁護士会の先生方とともに法教育の研究会を長年続けておられます。2010年度の横浜市教育実践フォーラムでは、分科会「法教育をやってみましょう」において中学校の実践報告をされました(当レポートバックナンバー参照)。
 中学校の法教育について、先生の構想をうかがいました。

現場の実感から

 学校の年間学習指導計画は、結構ぎっしりと詰まっています。模擬裁判を体験したりする法教育授業もできればいいとは思いますが、2012年度から中学校で実施される新学習指導要領では、「選択」がなくなり、「総合的な学習の時間」も減少するので、難しくなると思います。
 そこで、今以上に法教育が普及するためには、ふつうの社会科の授業の中にどのように法教育を組み込んでいくか考える必要があります。新しい学習指導要領に沿って、そこに少し法教育の視点を入れることはできるでしょうし、そういう形なら授業しやすいと現場の先生方も賛同してします。50分の授業の中に、20~30分取り入れる方法が実施しやすいのではないでしょうか。教科書の内容と法教育をどう結びつけ、生徒の法的なものの見方を広げるか、考えています。

歴史的分野について

 中学校の法教育というと公民的分野で、と考えられがちですが、歴史や地理的分野に取り入れると面白いのではないかと感じています。特に歴史的事象は、その時代の世界観を表していますから、制度・しくみ・法令などをみると国家権力と人々との関係がよくわかります。例えば、法令一つにしても、権力のあり方を象徴しています。裁判制度でも、昔は「お白州」だったり、拷問や残虐な死刑があったりしますが、生徒は興味を持ちます。そこで、ゲスト弁護士に「今ならこんな刑はできない。なぜか。」というような話をしてもらうこともできるでしょう。
 いろいろな場面で、少し法教育の視点を入れられるところを探したいと思います。そうすると、授業が一段と面白くなるのではないでしょうか。

地理的分野について

 シンガポールは道路で食べ歩きをすると罰金を取られるとか、国によりそれぞれルールがあります。ルールを見ると、その社会がわかるという面白さがあります。歴史は時間の流れに沿ってルールを見ますが、地理では空間的広がりの中で見るということです。

公民的分野については国際法の考え方を知りたい

 港中学校のある中区は横浜中華街があり、中国系の人々が多い地域です。「みなと横浜」の歴史的経緯から、他の地域もさまざまな外国人が比較的多いといえるでしょう。当然、学校の生徒も多国籍になり、生活習慣・学校制度・政治のしくみなどについてさまざまな考え方の違いが問題になることがあります。将来、日本の選挙権がもらえない生徒もいるのです。裁判員制度にも参加できません。高校進学については、さまざまな課題にぶつかり、悩む生徒も少なくありません。したがって、さまざまな国のルールの違いを調整する考え方が、日常的に求められているといえます。
 国と国の関係のあり方を定める国際法の基本的な考え方はどういうものなのでしょうか?国際法の根本的な考え方がわかると、国際社会の考え方がわかるはずだと思います。公民的分野には国際機関や国際条約がたくさん出てきますから、必要だと思うのですが、その点について国際法専門の法学者のサポートがほしいというのが、今の課題です。横浜市の場合は、生徒指導・生活指導の面からも、国際法専門家の助力が切実に求められていると思います。

教科以外の法教育の機会について

 校外学習の指導や、生徒会活動にも法教育の可能性を考えられます。2007年度の文部科学省事業報告「よこはまの法教育」に取り上げられた「東京校外学習のきまりを考えよう」では、生徒が校外学習のきまりを自ら作成し、発表しています。特別活動については、『教室から学ぶ法教育』 という形で研究成果をまとめました。「法教育」という名前ではなくても、いろいろな場面に法教育があると考えています。

研究会活動

 横浜弁護士会の先生方と教員の研究会は、横浜弁護士会館で月に1回ぐらい開いています。この活動で、学習のここに法教育を入れられるというところを見つけたいと考えています。

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