法教育素材の紹介5 NHK「ようこそ先輩」―考えてみよう“幸せな国”

2011年2月27日(日)8:25~8:55 NHK総合テレビ
「ようこそ先輩」―考えてみよう“幸せな国”
講師:堤 未果 氏(ジャーナリスト)
私立和光小学校(東京都世田谷区) 6年2組 36名

第1日目の授業

〈自分が幸福だと感じるときは?〉

講師:(自己紹介の後)「自分が幸福と感じるのはどんなときか、紙に書いてください。」
みんな:(なかなか書けない様子です。)
 チョコレートを食べるとき、ラーメンを食べるとき、ソファでテレビを見るとき、家でごろごろするとき、友達と恋バナ(恋の話を)しているとき、アニメ漫画を見るとき、秋葉原へ行くとき、お金が手に入るとき、等が発表されました。

〈いろいろな人の幸福を取材する〉

講師:「なぜお金が手に入ると幸せなのでしょうか?今のは自分一人の幸せでした。今度は、人の幸せのことを考えてもらいます。外に出て、いろいろな大人に幸せの取材をしてもらいます。気をつけることは何ですか?」
男子1:「挨拶。」
講師:「挨拶をしっかりしてください。私は仕事で人に話を聞くときに、気をつけていることが2つあります。みんなは、相手が話しているときどこを見る?」
口々に:「鼻の辺り。」「目。」
講師:「全部正解!人が話をしているときは、相手に集中してください。ノートに書くのは、話し終わったあとです。相手と直接向き合うことで信頼がうまれ、本音を聞けます。それから、みんなに幸せを聞いたとき、なぜ幸せに思うか聞きましたね?相手が答えたら、もう1回質問してください。なぜ?とか。これがもう1つの大事なことです。1回聞いたら諦めないで、もう1回聞いてください。」

〈班ごとに取材に出かける〉

 子ども達は、班に分かれて学校の外へ出て、道行く人や店の人にお尋ねします。
男子2:「自分が幸せと感じるのはどんなときですか?」
通行人の女性:「健康なことです。」
男子2:「健康なとき、なぜ幸せって思うのですか?」
通行人の女性:「病気をして、退院したばかりだからです。」

女子1:「一番幸せなときって、どんなときですか?」
レストランの女性:「家族が健康なとき。」
女子1:「なぜですか?」
レストランの女性:「幸せも嫌なことも一杯あるけれど、家族が明るく楽しく過ごせるのが幸せだと思うからです。」
レストランの男性:「例えばお正月とか、団欒しているときが幸せだね。」

お茶屋さんの男性:「お客さんと会って挨拶できたときです。なぜなら、人間は一人で生きていけないから、みんなと話して楽しく過ごせるのが一番いいと思います。」
通行人の若い男性:「人と話して笑いを取っているとき。すっごい受けているときがいいですね。」
パン屋さんの男性:「普通に今生きて、生活していること。ご飯を食べて、働いて、寝られる。今の日本は戦争がないから、普通に生活できて、幸せだと思います。」
若い女性2人連れ:「ありがとうと言われたとき。」

〈取材に出かけた児童の感想〉

男子3:「こうやって聞こうと思うと、結構いいことが聞ける。」
男子4:「断られたりしたけれど。1回目と2回目で、(相手は)最初緊張していたけれど、2回目の方が話しやすくなっていた。」

〈「わたしの幸せな国」を200字で書く〉

講師:「(取材したこともふまえて)みんなが幸せになるために大切だと思うことを200字で文章に書いてください。なぜ私が幸せにこだわるかというと、皆さんは当時2歳ぐらいだから覚えていないと思うけれど、2001年9月11日にすごい事件が起きました。」
男子5:「ハイジャック。飛行機がビルに突っ込んだ。」
講師:「そう。私はそのとき、ニューヨークの隣のビルにいました。窓の外に飛行機が見えて、グラグラッと揺れたんです。100階から金属の固まりが落ちてきました。一番怖かったのは、何だと思いますか?」
みんな:(沈黙)
講師:「人が落ちてきたことです。ビルが燃えて、逃げられなくて、熱くてたまらなくなって窓から落ちた……。そういうことがあって、そのときニューヨークにいた人はみんな同じことを考えました。生きている間は幸せに生きていたい。では、自分にとって幸せって何だろう。考えてください。」
 「私の幸せな国」の発表では、「みんなが仕事をして、休みも取れる。思ったことを言えて、食べられて、安心して眠れる。当たり前なことだけど、それが幸せなのかなと思う。」「みんなが健康で笑顔。夕ご飯の時はみんな集まって、あったかい気持ちになれたらいいな、と思います。」「一人ひとりの仲がいいこと。大切な人が増えると、戦争をしなくなるから。」「ありがとうとよく言われる、言える国。なぜなら、ありがとうと言われて気分が悪くなる人はいないから。」という文章が披露されました。「家族と一緒にいること」「健康」「笑顔」「ありがとう」などのキーワードも紹介されています。

第2日の授業

〈様々な国の憲法前文の意義〉

 黒板に、日本国憲法前文と米国憲法前文のパネルが掲示されています。
講師:「私たちは何のために生まれてきたでしょう?幸せになるためですね。国は何のためにあるでしょう?私たち国民が幸せになるためです。そのために、憲法があります。私はイラク戦争で、憲法に関心をもちました。イラク戦争へ行ってアメリカに帰国した兵士が、『戦争はアメリカ合衆国憲法の正義と平等の理念に反するから、自分は除隊する。』と言うのです。アメリカ国民にとって、憲法はそういう存在であると意識しました。いろいろな国の憲法の一番大事なことが、憲法前文に書いてあります。このパネルを読んでください。」
 一人の女子が日本国憲法前文を音読してくれた後、
講師:「日本の憲法前文には「平和」という言葉がたくさん出てきますね。」
次に、一人の男子が米国憲法前文を音読してくれました。
講師:「ブータンという国はどこにあるかわかりますか?ブータンが最も紹介したい国です。すごい小さな国ですが、すごくいい憲法がある国です。九州と同じぐらいの広さに、70万人ぐらいの人が暮らしています。ブータンの憲法では、国の豊かさを経済ではなく、国民の幸福ではかることを定めています。それぞれの国の憲法前文には、国民が幸せになるための決意が記されているんですね。」

〈班の憲法前文をつくる〉

講師:「では、班でその班毎の憲法の前文をつくってください。皆さんの書いた「私の幸せな国」から、どれを取り入れますか?たくさんあり過ぎて、まとめるのが大変かも。」
 でき上がった憲法前文の発表です。
1班:「戦争や差別をしない。永遠に平和であることを約束する。弱い立場の人が安心できる国。ありがとうとよく言える、言われる国。」
5班:「国民全員が健康で笑顔でいられる国をつくる。どの国にも信頼される国にする。」
2班:「みんなで相談し合ったり、助け合ったりする。楽しく、にぎやかでたくさん話す国。」
3班:「学校でいじめや差別をなくす。」
6班:「おいしいご飯を食べられる国。」
4班:「国民全員が言いたいことを言えて、王様と仲が良くて、王様も国民と一緒に農業をして働く。みんな安心して眠れる国。」
講師:「みんなの発表を聞いていたら、どれも住みたくなる、すごく良い国でした。幸せがいつでも絶対一番大事なものです。みんなが社会に出たとき、仕事をしたり結婚したり、いろいろな悩みや嫌なことがあるかもしれないけれど、自分が幸せと思えることが人生で一番大事だということをずっと覚えていてください。」

〈授業後の児童および講師の感想〉

男子6:「インタビューするのが楽しかったです。」
女子2:「憲法のことなんて知らないし、調べようとも思わなかったけれど、お蔭で図書室に行って調べたりしました。」
女子3:「自分の幸せは考えるけれど、人の幸せは考えたことがなかったので、これからは考えてみようと思いました。」
講師:「(最初は少し緊張していましたが)子どもがとても純粋でまっすぐなので、こちらも鎧みたいなものが剥がれて、すごい楽しかったです。」

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