法教育推進協議会傍聴録(第38回)

 2015年6月16日(火)13:15~15:00、第38回法教育推進協議会が開催されました。2005年に発足した法教育推進協議会は今年で10年目を迎えました。第3代座長を4年間務められた笠井正俊先生(京都大学)が退任され、新座長に小粥太郎先生(一橋大学)が選任されました。新体制スタートの今回は、法教育のさらなる普及・充実に向けた今後の取組みについて話し合われました。(当日の配布資料より適宜引用させていただきます。)

〈主な議題〉
・専門学科及び総合学科高等学校における法教育の実践状況に関する調査研究について
・法教育の更なる普及・充実に向けた今後の取組み等について

1 専門学科及び総合学科高等学校における法教育の実践状況に関する調査研究について

 2014年度の普通科高等学校における法教育の実践状況に関する調査研究に引き続き、今年度は専門学科及び総合学科高等学校を対象とした調査が行われる予定です。そのスケジュール案が報告されました。今のところ、アンケート項目についての協議・検討は8月頃に行われ、調査開始は10月中旬頃、調査結果の報告は3月頃になるそうです。法教育教材の作成は、2011年度から順次実施された学習指導要領に基づき行われている学校における法教育の実践状況調査研究をもとに検討されます。高等学校向けの法教育教材作成については、今回の調査結果を待ち、来年度に検討される見込みとのことでした。

2 法教育の更なる普及・充実に向けた今後の取組み等について

 今後の取組み等の例は、おおまかに「既存の取組みの強化」と「新たな取組み」の2つに分けられました。
【既存の取組みの強化】
・法務省職員等の法教育授業(出前授業)
・マスコットキャラクターによる広報
・各種メディアとのタイアップ企画
・ロースクール生による法教育授業の支援、など
【新たな取組み】
・視聴覚教材の作成
・モデル授業の作成
・高等学校向け法教育教材の作成、など

〈委員からの質疑応答より〉
【連携に関して】
意見1:「司法書士会はいろいろな現場で法教育授業をさせていただいています。学校の先生がどこにアクセスすればいいかが見えない、という声が法務省の法教育実践状況調査でも寄せられていたと思います。関係各機関を結びつけるコーディネーター役・取りまとめ役も必要ではないか、ということを忘れないでいただきたいと思います。」

【法教育教材に関して】
意見2:「商業科高等学校には消費生活と法という必修科目が2単位ありますが、ほぼ民法入門といえます。法教育教材を新たに作成するのは大変なので、既存のテキストを充実するという方法もあると考えます。」
意見3:「高校向けの法教育教材が現場で実際にどう使われるのか、イメージが湧きづらいと感じます。使い勝手のいいものにするためには、昨年度の普通科高校対象の調査研究を参考にしたらいいと思います。今年度の調査書作成に際しても、教材のイメージをもって作成してもいいのかなと考えます。具体的には、アンケート項目を作るにあたり、学校の教育課程の中のこの辺りで法教育ができるだろう想定して質問を考えるということです。」
意見4:「実業高校には専門科目があり、法に関しても相当専門的な内容を扱う場合があります。それらが調査に上がれば、教材に反映することは考えられます。現場の先生方にとっては当たり前の連携やノウハウも、他の専門の先生には知られていない場合もありますので、連携の推進にもいいと思います。」

【法教育マスコットキャラクターに関して】
意見5:「マスコットキャラクターに関し、キャラクターには男子だけでなく、女子も入れてほしいと思います。他の受賞キャラクターもお忘れなく。」

【モデル授業に関して】
意見6:「モデル授業を作成したら、現場の先生の多忙を考慮し、まず夏休みの教員研修に使ってもらい、現場の先生に授業イメージを膨らませてもらう機会を設けることをご検討願いたいと思います。」(同意見あり)
意見7:「消費者庁が2010~11年度に作成したDVDが全国の中学・高校に配布されています。実際にそれがどの程度使われているかは現在調査中ですが、参考になるかもしれません。」
意見8:「東京都の「『法』に関する教育指導資料5 学校教育における『法』に関する教育の推進」というリーフレットに紹介しているモデル授業は、それぞれ教育課程の時間内で実践できるものです。法教育は学習指導要領の中に位置づけられているので、法教育をしていない学校はないといえます。ただ法教育という言葉を意識しているかどうか、ということではないかと思います。また、教科書を教えるのか、教科書で教えるのか、ということもあります。学校は、学習指導要領に示されている目標を教科書で教えることに精一杯です。ツールとして、視聴覚教材や外部機関との連携を考える場合には、この時間にこれが使えると示してくれると使いやすいといえます。社会科の単元のここで15分というように。」
意見9:「今のお話は、学校のカリキュラムに法教育が取り入れられていても、実践では法教育的な視点をもって取り組まれていないということかと思います。法教育に取り組みやすい環境を学校現場に作ること、法教育的な視点をもって授業をすることにも取り組んでほしいと考えます。」
意見10:「東京都の○○教育リストでは、○○を意図して授業をしてほしいという説明会を夏休みに行っています。各小中学校から教員が1名参加しています。」

【法教育の位置づけに関して】
 教育現場の現状として、法教育を様々な○○教育のうちの1つと見る考え方があります。法教育のさらなる普及を図る観点からは、「法は社会の構成原理である」という考え方が重要であるが、一方で、学校現場における取扱いの限界に配慮しつつ更に議論することが必要であるということになりました。

【マスコットキャラクターによる広報に関して】
意見11:「当協議会や法務省には宣伝の専門家はいないので、広告戦略の専門家の知恵を借りたいと考えます。LINEに関するものや、前回提案されたホウリス君のキャラクター設定など、中高生に訴求力のある宣伝をしてほしいと思います。」
意見12:「(ロースクール生による法教育授業の支援を通して接触の機会があるのなら)ロースクール生にも意見を聞いてみたらいいのではないかと思います。」
 法務省としては、夏休みのイベントに向け、関係者から文房具をという声があり、第一弾としてクリアーファイルを考えているとのことです。今後、ホウリス君を使ったアニメーションや教材内容なども検討したいそうです。

〈関係機関よりの連絡〉

 日本弁護士連合会は、2015年8月1日(土)に第9回高校生模擬裁判選手権大会を行います。今回は関東、関西、四国、中部・北陸の4大会が同日実施されます。関東大会の神奈川県、四国大会の高知県、中部・北陸大会の福井県では予選により選抜が行われます。

〈取材を終えて〉

 学校における法教育の実践状況調査研究は3年前に小学校対象から始まり、今年のいわゆる実業高校対象の調査研究で締めくくりを迎えます。調査の回数を重ねるにつれ、アンケート内容についての事前の検討が深まり、調査結果がより有意義なものとなるよう工夫されていると感じました。実業高校は専門性が高いということで、これまで以上に興味深い調査だと思います。
 法教育の更なる普及・充実に向けた今後の取組み等については、委員から活発に意見が出されました。今後の取組みに活かされることと思います。

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