2015年度全国公民科・社会科教育研究会「授業研究委員会」研究集会

 2016年3月20日(日)13:15~17:00、全国公民科・社会科教育研究会「授業研究委員会」研究集会―18歳選挙権に向けて、主権者教育の推進と留意すべき点について―が明治大学駿河台キャンパスで開催されました。テーマは、「18歳選挙権に向けて、主権者教育の推進と留意すべき点について」でした。全国から50名余りの教育関係者の参加をいただき、文部科学省教科調査官と公民科教育を専門とする大学教授の講演、高校教員による授業実践発表、そしてフロアを交えての熱心な討議が行われました。そのあらましをお伝えします。(当日の資料より適宜引用させていただきます。)

〈プログラム〉

13:20~14:00 講演1「学校における政治的中立性の確保や高校生の政治活動の留意点」
14:00~14:50 講演2「主権者教育を考える」
14:50~15:30 授業実践発表「模擬投票実践報告~大阪市長選挙を題材に~」
15:45~17:00 質疑応答、討議

1 講演1「学校における政治的中立性の確保や高校生の政治活動の留意点」

樋口雅夫 文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官

 

〈日本や高校生の現状〉
 今夏から実現する運びの18歳選挙権について、学校や公民科では何ができるかという観点から考えます。高等学校学習指導要領では「現代社会」「政治・経済」の内容構成に、既に民主政治と政治参加が盛り込まれています。これらはいわゆる「有権者教育」とは異なり、政治参加の基盤となるような自分自身の判断基準などについて考察をさせる広義の「主権者教育」です。
 今日の我が国の状況は、世界のGDPに占める日本の割合の低下に見られるように、国際的な存在感が低下しています。少子高齢化により、約50年後には総人口が約3割減少し、65歳以上の割合が総人口の約4割に達すると見込まれます。今の大人の頭ではなかなか解決困難な問題が次から次に生まれてきます。新しい世代が新しい発想で解決策を考え出していく必要があるといえます。しかし、高校生・若者の意識調査によれば、「積極的に社会参加する意欲が国際的に見て低い」「政治や経済、現代社会の諸課題について基礎的な理論や概念の理解、情報活用能力が十分身についていない」といった実態があります。一方で「政治や経済の仕組み、働く意義等を学ぶことへの関心は高い」という結果も出ています。社会に出て役立つ政治や経済の学習に意欲や関心は高いのです。これをとらえて、アクティブ・ラーニングなどの手法を組み合わせれば、より自分のこととして深く学習できるのではないかと考えられます。校外のさまざまなNPOや選管などの機関と連携して学習させることも1つの方法です。

〈期待される政治的教養育成のための教育〉
 アクティブ・ラーニングの視点からの、不断の授業改善が期待されます。「問題発見・解決を念頭に置いた深い学びの過程」「対話的な学びの過程」「主体的な学びの過程」を実現することが大事だと考えます。
 政治的教養の育成のためには、現実の社会的事象を扱うことが学習指導要領解説にも書かれています。生徒は社会的事象がもつ多面的性質、それらを見る多角的視点があることに気づき、自ら考察し、公正に判断する力を養うことが大切です。このような力を育むことを目指して、有権者となれば判断を求められるような政治的事象を題材として、解が1つに定まらない問いにも取り組ませることが求められます。具体的な課題について話し合うなかで、他人の意見に十分耳を傾け、自分の意見を根拠をもって論理だって述べ、可能ならば異なる意見を調整して合意を形成するような実践的な教育を行う必要があります。例えば「農業と食料問題」の単元で、農業自由化を推進する考え方と国内の農業保護を推進する考え方を調べさせ話し合わせることができます。その際、国内の生産者と消費者それぞれの立場からどう考えるか、また農業が果たしている食料安全保障や国土保全や環境保全という役割をどう見るか、多様な考え方や見方に気づかせ、今後の日本の農業・食料政策のあり方について探究させることが重要となります。

〈学校における政治的中立性と高校生の政治活動〉
 政治的教養の育成を図る学校教育は、教育基本法第14条第2項(学校の政治的中立性の確保)、公職選挙法第137条(教育者の地位利用の選挙運動の禁止)などを踏まえる必要があります。教員による生徒への一方的な意見の押しつけは控えるべきです。多様な考え方や見方に触れさせることが大切なのです。そのとき、生徒が気づかなかった考え方や見方を教員が提示することは教育活動の一環と言えます。
 高校生の政治的活動等については、2015年10月29日に出された文部科学省の通知(http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1363082.htm)をご覧下さい。18歳になれば有権者として休日や放課後に校外での選挙運動に参加できますが、公職選挙法に則って行う必要があります。またこれに伴い、高校生は休日や放課後を使って自他の学習に支障を与えない限りで、校外で違法や暴力的ではない政治的活動に参加できるようになりました。そのときも、家庭の理解の下で、生徒が強制されず自主的に判断して行うことが大切です。詳しくは、全国の高校生に配布しました副教材『私たちが拓く日本の未来』(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/shukensha/1362349.htm)をご覧ください。この副教材には、選挙の仕組みや留意点の紹介のほか、さまざまな政治や選挙に関するアクティブ・ラーニングの事例も載っています。公民科はもとより総合的な学習の時間や特別活動等における指導でも活用することが期待されています。主権者としての資質・能力は、公民科のみならず学校の教育活動全体を通して育むことが大切です。とりわけ公民科には、今日の人間や社会の課題を発見する力や物事を批判的に捉える力を育むことが求められています。

2 講演2「主権者教育を考える」

藤井 剛 明治大学文学部特任教授

〈高校生(若者)の現状〉
 平成25年に内閣府が実施した、諸外国の若者の政治意識を比較した調査によれば、日本の若者の政治的関心は「ある」という回答が約50%であり、フランス、英国が50%台であることと比較すると、けっして低い数字とは言えません。しかし、年齢別投票率を見ると、20~24歳の層は前回の第46回衆議院選挙では約35%で、他のどの年代よりも低くなっています。高校生に選挙に行かない理由を尋ねたアンケート注1があるのですが、その回答中の「誰に投票するか判断できないから」「投票したい候補者がいないから」という理由に注目したいと思います。同様に高校生が18歳選挙権に反対する理由も、「政治や選挙に関する知識がないから」「18歳は、まだ十分な判断力がないから」が上位を占めます。この結果から、現代の高校生は真面目で、政党の主張がちゃんと理解できなければ選挙に行ってはいけないと考えていることが分かります。
これまで高校で行ってきた政治・経済などは主に政治システムを教えていました。それでは「投票先」や「判断力」を養うことは出来ません。「現実の政治」を教えなければ高校生は投票に向かえないのです。ここにこれまでの教育と異なり、「現実の政治」を教える「主権者教育」が必要になってくるのです。ただし主権者教育は、狭義の主権者教育と広義の主権者教育に分かれます。前者は「投票に行こう」という投票行動を促すもので、後者は国や社会の問題を自分の問題として捉え、自ら考え、自ら判断し、行動していく主権者としての自覚を促し、必要な知識と判断力、行動力の習熟を進める教育と考えることが出来ます。

〈狭義の主権者教育の教材〉
 さて、ここでは「狭義の主権者教育」とはどのようなものか考えてみましょう。
〔1〕投票の基礎的知識・理解
 投票券は世帯主宛てに一括して郵送されてくることを知らない若者もいます。投票券がなければ投票できないと思っている若者もいます。投票に向けての最初のハードルなので、住民票がある場所で投票するなどの基本事項を含め、きちんと理解させるべきでしょう。
〔2〕課題1:「面倒くさい」への対応
 「投票へ行かない理由」をアンケート上位の項目について、1つずつ対応策を考えましょう。回答の第1位「面倒くさい」-これを「課題1」としますが-への対応は、模擬選挙注2などを体験させることです。多くの高校生は投票に時間がかかると思っています。そこで模擬選挙を経験させと、投票は簡単に済むことを理解させて、投票へのハードルを下げることが出来ます。
〔3〕課題2:「選択する自信がない」への対応
 「誰に投票したらよいか分からない」という回答が第2位です。これを「課題2」としましょう。対策として、いくつかのテーマに絞った政策比較の教材を使って体験させてみましょう。例えば「Work Sheet 18歳選挙権に向けて」(清水書院 2016年)は、投票基準(1つでも2つでもよいのです)を作ってマニフェスト比較を行う1時限で授業できる教材です。政党のマニフェスト比較表を現場の教員が作ることは、選挙期間以外はOKです。新聞のまとめなどを利用することは、いつでもOKなので、各校で自分の学校にあった教材を作成することも出来ます。
〔4〕課題3:「有用感がない」への対応
 「私の一票で政治が変わるか」=「有用感がない」ことも棄権の理由です。これが「課題3」です。この感覚に対しては、選挙に行かないと損をすることを理解させることも一つの方法です。NHKのテレビで2016年1月16日に放送された「深読み」では、大学生のうち奨学金をもらっている人がかなりの割合にのぼることから、大学の学費と国の補助金の関係について若者が政治的影響力を持つことが大切であると伝えていました。このような事実に則した教材が重要です。

〈広義の主権者教育の教材〉
 これまで、「狭義の主権者教育」を考えてきましたが、「広義の主権者教育」はどのようなものが考えられるでしょうか?
まず第1に、政治を身近に感じるプログラムとして、校内のことについて生徒が自主的に決めて実行していく活動が大切です。生徒会活動を活発にすることは勿論、校庭や体育館の使い方、部活のローテーションを生徒に決めさせたりすることも主権者教育になります。また、そのほかに、公民科や総合的な学習の時間を使って、模擬裁判、模擬議会、模擬選挙、模擬陳情、ディベート、グループワークなどを行うことも主権者にとって必要な力を身に付けさせることができます。例えば、神奈川県立湘南台高等学校は、学校全体で主権者教育を含むシチズンシップ教育に取り組んでいます。ぜひ学校HP(http://www.shonandai-h.pen-kanagawa.ed.jp/)をご覧になってみて下さい。

〈副教材『私たちが拓く日本の未来』〉
 いろいろ批判されていますが、この副教材は「中立」についてのガイドラインなどを示しており、「ここまでOK集」と読んでください。私見では、「中立」とはA党B党の「真ん中」ではなくて、方法としいての「公平」と言い換えられるものだと考えています。ですから、政党の政策を比較するときは「すべての政党のマニフェストを比較する」、議員を招いて講演をしてもらうのならば「すべての会派に声をかける(来るか来ないかは政党の自由です)」。このように考えています。
 副教材では、中立を守る例として、意見の対立がある問題を扱う場合には、異なる見解を代表する複数の資料(新聞)を示して生徒に考えさせることが示されています。ただし、例えば複数の新聞を取り上げるといっても、同意見の2紙のみを取り上げては中立にならないことには注意が必要です。

〈主権者教育教材作成上の注意〉
 これからは、現場が実践を積み上げて、学校の実情に合った「主権者教育」の教材開発を行う時期と考えています。「高校生が政治や選挙に関心を持つためには何をすればよいと思うか」と若者に尋ねた調査では、「新聞記事を使った授業」という回答が一番でした。これからは、具体的な政治を教える際に、新聞を活用することが多くなるでしょう。ただしその際、「メディア・リテラシー」をきちんと身に付けさせることが必要です。「新聞を比較する」「批判的に読む」「発信する」ことが、メディア・リテラシーの根本です。同時に、教える側の教員にも必要な力だと思います。
また、「どのように学ぶか」も重要です。授業方法と学習定着率の関係についての研究からは、アクティブ・ラーニングの効果が検証されています。ただ座って講義を受けるよりも、発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習、グループディスカッション、ディベート、グループワーク等の主体的・協働的な学びの方が学習定着率は高いのです。ただし50分すべて動かす必要はありません。例えば50分授業のうち、20分講義・20分班活動・10分グループ発表やまとめの授業も可だと思います。アクティブ・ラーニングで大切なのは、教員が黙っていることです。つまり、教える側にはファシリテーターに徹するという発想の転換が必要です。生徒に授業の流れを示すために、前年度の授業の様子をVTRで見せる方法も有効です。
「教員が自分の意見を言ってよいのか」に関しては、『私たちが拓く日本の未来』指導資料に、「教員の発言は、生徒への影響力が大きいため、原則としてしてはならない」と書いてあります。どうしてこのような書きぶりになるかというと、「教員の発言は、生徒への影響力が大きい」と見られているのです。そのことを考えると私見ですが、普段から討論中心の授業をしているならば、教員の意見も多様な意見の中の1つと自ずと理解されるはずです。問題は、「チョーク&トーク」を行っている教員側にあるのでしょう。

3 授業実践発表「模擬投票実践報告~大阪市長選挙を題材に~」

大畑方人 東京都立高島高等学校教諭

〈高島高校のプロフィール、授業の実際〉
 都立高島高校は創立42年、高島平団地と共に発展してきた高校です。部活動が盛んで、1学年8クラスです(新1年生は9クラス)。3年前に赴任して以来、高校3年生の必修「現代社会」と選択「政治・経済」を担当し、4回の模擬投票実践を行いました。
 「大阪市長選挙を題材にした模擬投票」の実践例をご紹介します。授業は現代社会の特別授業として実施しました。全4時間(1時間は50分)で、模擬選挙のねらいは、「体験的に学ぶことで政治へ関心をもつこと」「自分とは異なる他者の見方・考え方に気づくこと」です。授業は次のように進みました。
1時間目:NPO法人Youth Createによる「公園づくりワークショップ」。合意形成の方法を学習する。
2時間目:板橋区選挙管理委員会による「選挙の話」。選挙の歴史的概要と仕組み、選挙運動の留意点などを解説していただく。
3時間目:「『大阪市長選挙で模擬投票!』ワーク」。投票するとき何を重視するかをまず考える。プロフィールやマニフェストを比較して点数化し、投票先を決定する。
4時限目:「実際の選挙結果との比較、感想文執筆」。

〈「大阪市長選挙で模擬投票!」ワークとは〉
〔1〕選挙で投票するときに重視するものを、優先順位を考えてダイヤモンド型のランキング表にします。隣の人と意見交換もします。
【選択肢】人柄、外見、年齢、性別、出身地、学歴、職歴、理念・政策、所属政党(無所属)
〔2〕実際に有権者になったとして、何を参考に投票先を決めるか、3つを選びます。
【選択肢】街頭演説・選挙カー、ポスター・ビラ・ハガキ、選挙公報、家族の意見、友人の意見、候補者・政党のHP、テレビ報道、インターネット(SNS)の書き込み
【結果】(生徒の多くが選んだもの)家族の意見、HP、テレビ報道
〔3〕大阪市長選挙の告示日のニュース(NHKのVTR)を見て、第一印象で最も好感を持てた候補者を4名の中から選び、理由も書きます。
〔4〕4名の候補者について、プロフィールや政策などの項目(全部で5つ)ごとに10点満点で点数をつけ、合計点を出します。グループになって、各候補者の良かった点や、疑問点について話し合います。資料としては、大阪都構想の解説文、各候補者のマニフェスト(早稲田大学マニフェスト研究所が候補者に同一様式で依頼した回答)を使いました。

〈指導上の留意点〉
・新聞の活用は、複数紙を用意することが大切です。
・教員の個人的な見解については、特定の政党・候補者を支持するような発言をしないように注意します。裏返せば、AとBの立場がある場合、両方の立場にバランスよく触れることが必要です。

〈これからの主権者教育〉
 校外の機関との連携を深めるとともに、生徒に政治の世界に触れさせたいと思います。高校生でも長期休業を利用して議員インターンシップに参加する活動があります。本校生徒も参加して政治に深い関心をもって戻ってきます。外国では被選挙権年齢が日本より低い国も多く、政治家が学校に来て話をするのもよくあることです。日本では、政策について聴くために学校に議員を呼ぶ場合は複数の政党に声をかける配慮が必要でしょうが、ぜひ実現させてみたいと思います。若者が政治を語ることが「カッコイイ」と思えるような社会にしたいですね。

4 討議より

〈模擬投票授業に関して〉
【授業の「ねらい(目的)」を明確にすることが大切】
 「授業は、ねらい(目的)を明確化しておくことが大切です。今回の模擬選挙授業では、自己の投票判断を最終形成することよりも、政治への無関心を取り払い、他者の意見を聞き合う態度を養うことを目的としました。」(大畑先生)
「模擬選挙授業ならば、小学生なら投票の意義を理解するという目的もあり得ます。生徒の発達段階や環境に応じて、学習の内容やあり方は多様であってよいと思います。模擬投票を行ったあと、そこで政策課題になっていたことを深く学習することもあるでしょう。」(樋口先生)
 「授業のねらいによっては、模擬選挙の設定は全く架空でもいいと思いますが、その場合でも、なるべくありそうなことを取り上げ、候補者名の親近感など余計な情報を交えない方がよいでしょう。政治を身近に感じさせるのが目的なら、国政課題より地域課題を扱う方がふさわしいでしょう。模擬請願を書くのも面白いです。副教材『私たちが拓く日本の未来』に載っている授業実践例も地方政治の場面を主に想定して作ってあります。」(藤井先生)
【アクティブ・ラーニングに関して】
 「私の授業では、『自分の考えを書く→ペアで交換する→グループワーク』という段階を踏むことが多いです。また、授業中に意見が出ない場合、数名のグループを作らせて、『各グループで2つ意見を出してください』といった指示を出しています。文化祭の出し物の提案が出ない場合などでも、『グループで3つ案を考えて書く』方法があることを、司会者の生徒に伝えておくと役立ちます。」(大畑先生)
 「生徒が様々な意見があることに気づいた後は、『考え方は変わっていい』と考えています。主権者教育に限らず公民科教育で意識しているのは、1つの授業のなかだけで完結させる必要はないということです。高校から大学生・社会人となるにつれ、意見が変わって当然なのではないでしょうか。」(大畑先生)
【予算に関して】
 「NPOは無償のところが多いです。選挙管理委員会は無償です。議員インターンシップはI-CASが手配してくれて、無償です。」(大畑先生)

〈主権者教育の位置づけに関して〉
 「主権者教育を特別活動や総合的な学習の時間でも行うというのは、公民科だけでなく全ての教科の先生方が生徒の主権者意識を高めるために行ってほしいということです。今後、主権者教育をブームで終わらさないために、学校の教育課程にどう位置付けるかが問われます。2022年度から「公共」という科目が始まりますが、主権者教育は1教科に閉じ込められるものとはならない見通しです。」(樋口先生)
 「校外の政治に目を向けるばかりではなく、生徒会選挙やホームルーム活動の意義を再認識することも大切なのではないでしょうか。主権者をあらゆる場面で育てるという視点をもってほしいと考えます。」(参加者)

〈高校生の校外の政治活動の届け出制について〉
 「文部科学省がこう言ったから各教育委員会が従うというのではないことが大前提です。文部科学省では昨年10月の通知に示したとおり、高校生の校外での政治的活動や選挙運動については、『家庭の理解の下』で行われることが基本と考えます。家庭内で話し合ってもらうことがまず大事です。その上で、生徒の政治的教養が適切に育まれるように、学校には家庭や地域との連携・協力が望まれると考えます。」(樋口先生)

〈取材を終えて〉

 講演1では、主権者教育の重要性とアクティブ・ラーニングの有効性が説かれていました。講演②で、アクティブ・ラーニングにはどんなものがあるか、実践上のポイント、教材作成の際に注意したらいいことなど、具体的なお話がされました。さらに実践報告では、授業風景のVTRも盛り込んで、50分の「現代社会」の授業として教員が実践する方法が示されました。参加者から、生徒会活動といった日頃の活動の意義を再認識する必要も指摘され、主権者教育を一層身近に感じられました。主権者教育と法教育の深い関係については、今後もレポートしていく機会がありそうです。

 

注1:
宮崎県選挙管理委員会が平成27年に県内全高校生に実施したアンケート調査 http://www.pref.miyazaki.lg.jp/senkyo/kense/senkyo/enquete30000.html

注2:
千葉市では、千葉市選挙管理委員会と弁護士会が協働して、学校へ模擬選挙の出前授業を行っています。http://www.houkyouiku.jp/12041201 参照
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