第50回「法の日」週間記念行事  法の日フェスタ②

「第50回「法の日」週間記念行事  法の日フェスタ①」からの続き。

裁判官・検察官・弁護士によるトークショーの続きです。

出演者 丸山哲巳判事 東京地方裁判所、任官13年目
      望月栄里子検事 東京地方検察庁、任官12年目
      宮村啓太弁護士 第二東京弁護士会、弁護士登録7年目
司会  法務省 村木康弘氏

④裁判員制度について、模擬裁判を担当したときの感想

裁判官:「模擬裁判の事例は、酒酔い運転で対向車に衝突し、死亡させてしまった危険運転致死罪でした。裁判員の方は、プロとは違う視点を持っていて、はっとさせられることがありました。例えば、被告人が被害者に謝罪の手紙を出した時期が遅いのは、いかにも裁判対策のようだとか、キャラクターが器用な人でないだけで、謝罪の気持ちがないとは言えないなど、なるほどと思いました。」

検察官:「模擬裁判は閉店した店に侵入した犯人が、追い掛けてきた店員に怪我をさせた強盗致傷の事例などでした。判決結果を聞くと、私たちが考えていたより刑は軽めでした。裁判員の方は、事件関係者の人間関係の細かいところにまで興味を持たれることがわかりました。」

弁護士:「事例は、会社の同僚同士が酒を飲んで暴力をふるい、当たり所が悪くて相手を死なせてしまったとされる傷害致死でした。これまでは弁護士は、『被害者も許しているし、これだけの嘆願書も集まっているから、寛大な刑をお願いします。』と締めくくることがありましたが、裁判員の方に『なぜ嘆願書が集まっているから寛大にしなければならないのか?』と言われて、はっとしました。これからはなぜ寛大にしなければならないかまで言わなければならない、法曹が『常識』と思っていたことが当然には通じなくなるのではないかと思います。」

⑤裁判員裁判の模擬裁判で印象に残ったこと

裁判官:「裁判員をした方が、『不安だったが、やってみたら、よかった。』と皆さん言ってくださるので、実際もそうだと思います。ぜひやってみてください。」

⑥裁判員裁判についての抱負

弁護士:「先ほどの法曹の常識に関連して、今まで見過ごされていたポイントであっても、きちんと説明さえすれば、説得力があるとも言えるので、やりがいを感じます。刑事裁判に間違いがあってはいけないので、国民の皆さんのお力を貸していただきたいと思います。」

検察官:「立証というのは簡単なことではありませんが、裁判員の皆さんに充分納得してもらえる証拠を集めて法廷に持って行くよう取り組みたいと思います。皆さんは裁判員になれますので、事件や人間に普段から関心を持ってください。」

裁判官:「裁判員と裁判官合わせて9人というのは、大変な人数です。充分なコンセンサスのためには時間が必要なので、じっくり議論したいと思います。言葉についても、例えば、法廷用語の『殺意』と日常生活の『殺意』では意味が違っている場合もあるので、これからは意味をわかってもらう工夫をしなければと思います。」

⑦裁判員制度が始まる前と後の変化

裁判官:「以前は法律家だけのコミュニケーションでしたが、今は言葉を国民のみなさんに説明するにはどうしたらいいかと、普段から考えるようになりました。」

検察官:「裁判所に提出する証拠の内容、作り方が変わりました。文書は短く、分かりやすく、分量はできるだけ少なくするようになりました。」

弁護士:「以前は、法廷での審理の後で裁判官に読んでもらう書面の作成に力を入れていましたが、今は法廷でのプレゼンに一番力を入れています。」

⑧最後に皆さんへコメント

裁判官:「裁判員裁判は一般の方も傍聴できます。もし裁判員に選ばれたら、御一緒に裁判をすることになります。一緒に良い裁判をしたいと思います。」

検察官:「証拠収集の難しさはありますが、証拠に基づきありのままの事実をお届けしますので、皆さんには証拠を見てよく考えて判断していただきたいと思っています。」

弁護士:「よりよい刑事裁判を目指していますので、皆さん、ぜひ積極的に意見を述べてください。」

3 大法廷見学

 日本で唯一の、最高裁判所の大法廷を見学しました。入り口を入ると、正面奥の一段高い所に15の椅子がずらりと並んでおり、テレビの画面や写真などで見るよりはるかに広く感じます。それは部屋中央の吹き抜け天井のためでもあります。この吹き抜けは直径14mで、床から高さ41mの所まで続いており、天井にはガラスがはめ込まれ、太陽の自然光が入ります。窓のない部屋なので、それが清々しく、天井が遠いような広さを感じさせます。
 壁は花崗岩の石組みで重厚ですが、平らではなくつなぎ目が隙間になっています。この隙間は音の響きを吸収するためで、声や音が反響してよく聞こえないことがないように、という配慮がされているそうです。壁に掛けられた4枚の巨大なタペストリーも西陣織で、窓のない閉塞感を和らげるほか、やはり音を響かせない目的もあるということです。
 最高裁判所の裁判官は全部で15人います。5人ずつ3班に分かれ、3つの小法廷をそれぞれ担当します。小法廷では、合計すると、1年間に1万1千件の事件を取り扱うそうです。大法廷は15人全員で年間2~3件の事件を扱い、年に4~5回しか使わないそうです。

4 自由時間

 自由時間には大法廷の裁判官席に座り、法服を着て写真を撮ることもできました。子どもも大人も思い思いにポーズを決めていました。大法廷前の大ホールでは、サイバンインコとサイサイというキャラクターが一緒に写真撮影に応じてくれたり、裁判員制度クイズコーナーや、トークショーに出演された裁判官・検察官・弁護士に質問できるコーナーもありました。

5 大法廷に集合

 再び大法廷に集合し、裁判員制度クイズの答え合わせをして、解散になりました。

 最高裁判所の威容は教科書やテレビなどで見ていますが、近寄り難いイメージをお感じの方も多いかと思います。このフェスタでは、スタッフの皆さんがとても親しみやすい雰囲気で、わかりやすく丁寧に説明してくださり、楽しいひと時を過ごしながら裁判員制度や法曹の仕事について学ぶことができました。特に現職の裁判官、検察官、弁護士の方のお話は若い方々の参考になったのではないでしょうか。

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