第一東京弁護士会 ジュニアロースクール2010①
2010年3月31日(水)10:30~16:00、第一東京弁護士会法教育委員会によるジュニアロースクールが霞ヶ関の弁護士会館において開催されました。日比谷公園の桜も咲いている春休みの一日、中学生たちがルール作りを体験した様子をお伝えします。
当日の流れ
10:30 | 開会、第一東京弁護士会板澤幸雄副会長の挨拶 |
10:40 | 「ルールってなんだろう?」 ルールについて考え、これから行なうルール作りについての説明 |
11:10 | 「マンションの問題を解決しよう!」(班毎にロールプレイ) |
11:50 | 昼食 |
12:40 | 役割毎の作戦会議 |
13:30 | 班毎のルール作り |
14:40 | ルールの発表・意見交換 |
15:10 | 弁護士からの講評 |
15:45 | 修了証書授与 |
まず全員が自己紹介
参加者は27名(男子19名、女子6名)で、5つの机に5~6名ずつ分かれています。自己紹介はマイクを持って、全員の前で一人ずつ行ないました。友達同士一緒に来たグループや、遠く鹿児島県から来てくれた人もいました。
ルールって何でしょう?
弁護士・吉田幸加先生
吉田先生:「今日は考えたことをどんどん発言してほしいと思います。間違ったら恥ずかしいとか思わないで、その代わり、人の発言も馬鹿にしないで聞いてください。今日のテーマは「ルール作り」ですが、ルールって何でしょう。どんなルールがありますか?」
男子1:「学校の規則や校則。」
男子2:「うちの学校はマナーといいます。自分達でしていいことといけないことを判断します。ゴミの捨て方が悪いときなどは、話し合いをして決めます。」
男子3:「交通ルール。例えば信号を守るとか。」
どんどん挙手をして、ゴミ出しの曜日や時間のきまり、飲酒喫煙は20歳から、運転免許の年齢、携帯電話のマナーなど、様々な例が出ました。
吉田先生:「国のルールはありますか?」
男子4:「義務教育のルール。」
男子5:「納税。」
吉田先生:「泥棒は?」
女子1:「警察に捕まります。」→吉田先生:「警察に捕まった後どうなりますか?」
女子1:「裁判にかけられます。」
吉田先生:「刑罰もルールの1つです。ルールがなかったらどんなことが起こりますか?」
ゴミだらけの街になり、交通事故がたくさん起こるし、犯罪も繰り返されるという意見が出ました。
吉田先生:「物の取り合いになったとき法律がなかったら?」
女子2:「力や暴力で解決することになると思います。」→吉田先生:「どんな人が勝ちますか?」→女子2:「力の強い人や暴力的な人。」
吉田先生:「常に力の強い人や暴力的な人が勝つことについてどう思いますか?」
男子6:「弱い人が不利になり、不公平です。」
吉田先生:「トラブルになったときルールがあれば、公平に解決できるかな?どんな人が勝つかルールが決まっていれば、ルールによる公平な解決ができます。ルールがあれば事故や犯罪も防げます。」
マンションの問題を解決しよう
ルール作りには、『はじめての法教育』所収の法教育教材「マンションの問題を解決しよう!」 が使われました。さらに、以前、茨城県弁護士会法教育委員会が教材として使用したものを、了承を得て使っています。
ペットを飼うことが禁止されていないマンションで、住人の中にペットの声やフンの悪臭が迷惑なので何とかしてほしいと思っている人がいます。参加者それぞれがA~Eの誰かの役割を割り振られていて、それぞれの立場から問題の解決策を考えます。役割は受付のときにクジで決められています。
A いちょうさん | チワワを飼っています |
B さくらさん | お隣の猫のフンが臭くて困っています |
C かえでさん | 朝ほえる犬を飼っています |
D もみじさん | 去年生まれた赤ちゃんが、かえでさんの犬の声におびえて泣きます |
E こならさん | 自室で小説家の仕事をしていますが、チワワの声が気になり困ります |
吉田先生:(「マンションの問題を解決しよう!」を朗読してから)「皆さん、入り口で引いたクジで、自分が誰の役をするかわかっていますね。班のメンバーに自分の役がどれかわかるよう、役名のシールを名札の上に貼ってください。各自の封筒の中に、自分の役のプロフィールが入っています。他の人に見せないように、声に出さずに読んでください。プロフィールから、想像を膨らませてそれぞれの役になりきり、自分の立場ならどういう主張をするか考え、提案をしてください。各班には中立の管理人として弁護士の先生が加わっています。管理人は司会をお願いします。11時50分までです。」
丸秘のスタンプが押されたプロフィールには、A~Eの人物たちの詳しい状況や気持ちが書いてありました。まずは、みんなそれを黙読しています。
人物の意見を班内で主張
1班から5班まで、お互いを人物の名前で呼びあうこととし、管理人が書記をやってくれる人を決めるなどしてから、めいめいの人物の気持ちを表明するよう促します。
「自分に便利であることと周りの納得が得られるかということ両方を考えて、自分の立場ならどうしたいか考えて。」とアドバイスする管理人もいましたが、吉田先生が廻ってきて、「最初は自分の意見をどんどん言うということでいいのではありませんか。」とハードルを下げていました。
レポーターが机の間を廻って聞いたのは以下のような意見です。
1班:ペットをどうしたいのか管理人がまとめたところによると、
さくらさん、もみじさん→完全禁止
こならさん→部分禁止
いちょうさん、かえでさん→飼いたい、まず躾をし、ダメなら自分の部屋を変えてもらう。
2班:考え中
3班:かえでさん→躾は手遅れみたいで、犬にほえないよう言ってはいるがきかない。
いちょうさん→犬を散歩させたり、留守するときはペットホテルに預ければいいでしょう。
こならさん→昼間、いちょうさんが仕事で外出中にチワワがうるさいのです。
もみじさん→昼間も赤ちゃんと家にいます。朝は忙しいので泣かれると困ります。
4班:「管理人はお金を使って設備を良くしたりできますか?」という質問に、「管理人はお金を出さないけれど、みんなが出し合えばできます。」という回答でした。
5班:こならさん→自分の方で努力して解決する。猫の匂いは気にならない。
さくらさん→猫の主人に何度注意しても、口だけで実際には何もしてくれず困っている。
昼食も弁護士の先生と一緒に
昼休み、班のままお弁当を囲んで弁護士の先生と一緒に食べました。話も弾み、昼食後弁護士会館を案内してもらっている子ども達もいました。部屋に飾ってある、天秤と剣を持つ女神の像を興味深そうに見ている人もいました。
役柄ごとに分かれて作戦会議
吉田先生:「今度は人物ごとに集まって、同じ役の人同士で作戦を練りましょう。情報交換をして作戦を練る場なので、結論を出す必要はありません。できるだけ子どもからアイデアを出してもらって、管理人はサポートに徹してください。13時20分まで。」
レポーターはまた机の間を、意見を聞いて廻りました。
吉田先生:「マンションは分譲です。」(各班からの疑問に応え。)
さくら役:「こちらも猫を飼って、猫パンチをさせようか」 →仲間から笑いながら批判が出ていました。
もみじ役:「罰金を取っても迷惑は変わらないから、防音壁などの対策を採るほうがよい。人を雇って犬を朝散歩に連れて行くとなると、費用が大きくて問題だから、防音はいいアイデアだと思う。」
管理人は「お互い譲り合うとみんな損をするから、少しわがままに話し合って、それでうまく策が出ればいいですよ。」とアドバイスしています。
こなら役:「いちょうさんが引っ越せばいい。チワワを諦めてもらう手もある。」
管理人:「相手が嫌と言ったら、理由を聞こう。すると譲り合えるところが見つかることがあります。最初から譲らないで。防音壁も一応、いちょうさんに代金を払ってと言ってみればいいでしょう。」
いちょう役:「自分が引っ越す。ペットを飼っている人が防音装置をつける。躾をできるだけする。話し合っていちょうともみじの部屋を交代する。ペットを飼っている人を上の階、迷惑を受けている人を下の階に移す。小説家に別の場所で仕事をしてもらう。いちょうの仕事中、チワワをペットマンションに預ける。迷惑は我慢してもらう。」
かえで役:「散歩させたりしてもみじさんに配慮すべきだ」
この意見に対し、「犬を思う気持ちは、もみじさんが自分の子どもを思う気持ちと同じだと言いたい。犬に絶対ほえさせないことは無理。」という意見が出ます。
管理人たちは、子どもたちが自分から譲ってしまうと議論にならないので、盛り上がるようにアドバイスしようと打ち合わせていたそうです。
この後、いよいよルール作りに入ります。続きは報告その②を御覧下さい。
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