墨田区立錦糸小学校 「新聞を活用した学習」

 2012年1月14日(土)9:30~10:15、墨田区立錦糸小学校で東京都言語能力向上推進校として都民公開授業が行われました。第5、第6学年は社会科の「新聞を活用した学習」でした。2つの学年について、一部分ずつお伝えします。特に、6年生は政治の学習の後なので、興味深い展開になりました。

墨田区立錦糸小学校のプロフィール

 1918年(大正7年)、東京市太平尋常小学校開設(現在の横川1丁目)。
 1923年、関東大震災で校舎が大破、全焼。
 1929年(昭和4年)、現在地に鉄筋コンクリート3階建ての新校舎ができました。
 1941年、東京市錦糸国民学校に名称変更。
 1945年、東京大空襲で本所地区は全て焼けました。
 1947年、東京都墨田区立錦糸小学校に名称変更。近年は、「特色ある学校づくり推進研究協力校」の発表を重ねています。
 2005年度からはコミュニケーションの教室「あおば」を設置、5クラス48名が在籍しています。
 JR錦糸町駅から徒歩約3分。周囲は墨田区の施設や商店街が広がっています。

児童数          (錦糸小学校ホームページより 2011年4月6日現在)

1年 2年 3年 4年 5年 6年 合計
男子 14 13 9 23 12 14 85
女子 9 13 16 18 8 12 76
23 26 25 41 20 26 161

 

〈言語能力向上推進校としての今年度の取り組み〉

 墨田区の学習状況調査や平素の学習の様子から、今年度は言語能力の向上が全ての学力向上の基礎となると考え、全体計画の中心に据えています。具体的な取組みとして、言語能力のうち、特に国語の基礎力の向上を図るため、次の3つのことに取り組んでいます。
① 国語辞典を活用した指導・・・第1学年から
② 新聞を活用した指導・・・第3学年から
③ 学校図書館を活用した指導・・・1学級1取組

新聞を活用した指導について

 週に1回、小学生向けの新聞を購読しています。新聞を活用する指導は、次の3つの場合に分けられます。
① 国語科の教材とする場合
 記事の編集のしかた・書き方、報告文等の必要なこと・重要なこと、要約の学習を行う。
② 各教科等の言語活動で使用する場合
 社会科で政治と暮らしとのかかわりを考える、総合的な学習の時間に記事のスクラップを課題解決に役立てる。
③ 読書として新聞を読む場合
 関心のある記事を詳しく読んだり、知らなかった情報を得たりしながら、読むことの幅を広げる読み方をする。
(以上、当日のプリントより引用させていただきました。)

1 5年1組 社会科授業「新聞を読もう」

 第2校時 18名(2名欠席)

〈導入は新聞の読み方指導〉

(授業開始前に、先生が配り係に、国語辞典を全員に配るように指示しました。)
先生:「皆さん、毎朝、小学生新聞を読んでいると思います。今日は、教科書・ノートは出さないで、ワークシートに書いてください。では、今日の話題の新聞を配ります。」
ワークシート(略図)

(ここに新聞の切り抜きをはる)
むずかしい語句
感想
(新聞の抜書きをする)

 

児童1:「なぜ辞書があるんですか?」
先生:「なぜあるか、これから話します。新聞の、男の子の写真が載っているところを上にしてください。先生の話は、(友達に聞かないで)自分で聞きましょう。新聞を読んだ後、どれだけ意見をもったり、考えたりするかが大事です。―中略―
  新聞の切り抜きをして、読んだ感想を書くことはとてもいい勉強になります。社会の様子、政治、文化、遊び、漫画やゲームのことまで、知識を増やすことができ、大事です。辞書は、難しい言葉が出てきたときにひきましょう。言葉はたくさん覚えてください。
   ワークシートの左側に、あとで記事をはってください。右側「難しい語句」のところに意味を書いて、その下に感想を書きましょう。最後に新聞の写し書きを、全部でなくていいので、書いてください。まず読んでから、この3つのことをします。
   では、見出しを読みます。『脱原発世界会議。小4○○君、14日の会議でスピーチ。』子ども1人だけで、今、自分の意見を発表しに行っているということです。『福島とそれ以外の人の差をなくしたい。』読むと、どんな気持ちで記事が書いてあるかわかると思います。先生が読んだのではわかりませんから、自分の目で読んでください。では、10:00までに感想を書いてください。始め。」
先生:「いい質問が出ました。読んでわからなかった言葉は、すぐに辞書を引いていいです。」

〈感想の発表〉

先生:「時間になったので顔をあげてください。皆さんのやり方でよかったところは、線を引きながら読んでいる人がいたことです。初めての言葉やわからないところに線を引いたり、囲んだりするのはとてもいいですね。
『登壇』という言葉をみんな調べていました。辞書に載っていません。登るという字の意味はわかるけれど、『壇』がわからない。そういうときは分けて調べます。『壇』だけ調べると、『高くなっているところ』。合わせると、高いところに上ってスピーチをすること、という意味になります。では、感想を発表してください。」
児童2:「テレビのニュースで分からないことが詳しく載っているので、いいと思いました。」
児童3:「小4なのに会議でスピーチをするなんて、すごいと思いました。」
児童4:「自分の故郷福島県のためにいろいろやることは、大人もするけれど、子どももすることがわかりました。」
児童5:「被災地のために頑張っているから、すごいと思います。」
先生:「児童6君、発表してください。」
児童6:「福島原発のような事故を無くしていかなければならないと思いました。」
先生:「被爆とは、『放射線を浴びること』と調べてくれました。」
児童7:「福島とそれ以外の人の差をなくしたいという目標をもって、頑張っていることがわかりました。」
先生:「では最後に、右下に新聞の抜き書きをしてください。」

2 6年1組 社会科授業

 第2校時 24名(2名欠席)

〈授業の進め方〉

6年1組では、児童がめいめい自分の関心のある記事を持参しており、それを読んでワークシートの左側に貼り付け、自分の感想や、読み取ったことをプラス面とマイナス面に分けて書くことになりました。個人で感想などをワークシートに書いた後、グループに分かれて友達と感想を話し合います。
ワークシート(略図)

分からない語句・意味 (ここに切り抜きをはる)
記事に対する自分の感想
プラス面
マイナス面
友達の疑問・感想

 

〈グループ討論〉

 話し合いは3~5人ずつのグループ6つに分かれて行われました。グループのメンバーが持ち寄っている記事内容は、さまざまです。あるグループは、「普天間打開は難しく」と、「関係閣僚増税行脚へ」という記事が集まり、児童は自分の知識を口々に説明し、他の児童がそれについて質問したりしています。うまく説明できない児童に対しては、グループの司会者が、「とにかく記事を読み上げて。」とアドバイスしていました。そのほか持ち寄られた記事は、「消費税増税へ背水の陣」、「消費税増税へ協調呼びかけ」、「首相番日記」、「ひき逃げ容認で運転手2人逮捕」、「脱走の受刑者逮捕」などがありました。
 話し合いでは、「マイナス面をプラスに変えるために何をすればいいか考える」ことが求められているようでした。「ひき逃げ容認の運転手2人逮捕」の記事に対し、あるグループ内の話し合いの様子。
司会の児童:「マイナス面をプラスに変えるためには、何をすればいいですか?」
記事を持参した児童:「運転手はそこに残って、救急車を呼べばよかった。」

〈グループ討論の後は先生と問答〉

(机をもとの位置に戻しています。)
先生:「みんなと話し合ってどうでしたか?」
児童1:「記事が同じ人がいました。」
先生:「考え方はどうでしたか?」
児童1:「違っていました。視点が違った。」
先生:「どういう視点ですか?」
児童1:「友達は沖縄の人が困ると言っていました。僕は、政府が困ると思いました。」
先生:「なぜそういう違いが生まれるかというと、記事を見る視点が違うからですね。6班はみんな同じ記事(脱走の受刑者逮捕)でしたが、感想はどうでしたか?」
児童2:「ちょっと違いました。」
先生:「マイナス面への対策を集めると、どうなりますか?」
児童2:「刑務所の警備を厳重にしてほしい。」
児童3:「そうすると、国のすることだからやはり税金を使ってしまう。」
先生:「税金を使うとどうなりますか?」
児童4:「財政が厳しくなるので、消費税が上がってしまいます。」
先生:「いろいろな記事が全部つながっていますね。次回は、感想をプラス面とマイナス面ではなく、日本国憲法の3つの視点から書いてもらいます。日本国憲法の3大原則って、何でしたか?」
口々に:「平和主義」、「国民主権。」
先生:「あと1つは?」
児童5:「基本的人権の尊重。」

取材を終えて

 5年生は全員で同じ記事を読み、6年生は自分の関心のある記事を読んで、伝え合うという展開でした。レポーターは6年生授業の前半を参観していなかったので、記事についての「プラス面」と「マイナス面」とはどういうことか最初わかりませんでした。「マイナス面」については、子ども達の話し合いや先生との問答から、新聞記事の中で事件の問題点を見つけ、その解決策を考えるということだとわかりました。5年生の授業では、記事に取り上げられた人の気持ちを考えることが求められているようでした。
 新聞を読む際に、学年や学習の進み具合に応じて、「記事から何を読み取るか」テーマをもって学習している点が、重要だと思います。6年生は次回の授業で、日本国憲法の3つの原則を、記事を読む視点とするそうです。憲法を身近に考える、興味深い法教育授業になりそうです。どんな授業になるか、ぜひ参観したかったと思いました。

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