全国公民科・社会科教育研究会 平成24年度全国研究大会(北海道大会)
全国公民科・社会科教育研究会全国大会は2012年8月2・3両日、北海道札幌市で開催された。研究主題は「持続可能な社会における公民的資質と課題解決能力の育成」で、道内をはじめ全国各地より高等学校で主に公民科を担当する教員百数十名が参集し、授業実践報告と研究協議を行った。そのなかで、法教育に関する実践報告があったので紹介する。
授業実践報告
それは、第3分科会「政治・経済的分野」において、北海道札幌月寒高等学校山口晴敬教諭と札幌弁護士会石塚慶如(やすゆき)弁護士(札幌総合法律事務所)による「法教育を学校現場にどう実践するか~弁護士との連携に着目して~」である。山口教諭の前任校(北海道札幌西高等学校)での公民科「現代社会」における授業実践と現任校での「総合的な学習の時間」における実践が紹介された。さらに、弁護士との連携の効果と課題、教師の役割などについても言及された。
「憲法(表現の自由)について考えてみよう」
授業実践は、「憲法(表現の自由)について考えてみよう」というテーマで、立川反戦ビラ事件を参考にして作成された事例をもとに、「あなたが弁護人だったらどのように弁護しますか?」という設例であった。社宅に立ち入ってビラを配布した被告人が住居侵入罪で現行犯逮捕された事例で、①被告人を無罪とするための根拠は?(憲法の「表現の自由」)、②有罪無罪を考えるにあたって対立する利益は?(表現の自由と住居権)、③配布するビラを「毛皮販売停止を求める国会請願のビラ」、「震災復興を求める国会請願のビラ」、「ピザ屋の宣伝チラシ」の3種を比較させ、結論が変わるか考えさせる。表現の自由の対象物の価値の序列を考えさせるねらいである。ここでは、「表現の自由」の意義や重要性を生徒に気づかせることや権利相互が衝突した場合の調整方法について生徒に結論とその理由を考えさせることがこの実践のねらいであると説明された。
弁護士との連携
次に、弁護士との連携について、教師の授業観の転換が迫られること、授業案に基づく指導案の構築などが必要となる。また、生徒にとって、いつもの教師とは異なった非日常の存在である弁護士は生徒の興味関心を否応なく高めることになる。課題としては、教師は弁護士からの助言をもとに授業案・指導案のブラッシュアップをすること、生徒の思考・発言の機会を生徒に対して保証すること、グループ討論時において教師が助言することなどが重要である。法や裁判の世界では、「真実」と言われるものはなく、真実と言われるものに教師が導かないようにすることが必要だ。真実は一つとは限らず、討論によって発見されるものであることを強調され発表を締めくくった。
〔原稿執筆:太田正行(慶応義塾大学教職課程センター〔非常勤〕)〕
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