法学部教育から見る法教育(第0回)

 本企画は、憲法研究者である私が「法学部教育から見る法教育」というテーマで、さまざまな先生方と法教育・主権者教育と法学部の教育の関わりをテーマに対談するものです。

 初等中等教育の現場で法教育が始められてから10年以上が経過し、教育現場では一定の蓄積が積み重ねられてきています。また昨今、とりわけ高校現場において、18歳選挙権との関わりで主権者教育のニーズが高まっています。
 法教育・主権者教育は、公民科を中心として、国語など、その他の科目でも、熱心な先生によって現場で模索されています。
 他方で、そうした教育を受けて育った児童・生徒たちが大学に進学し、法学を学ぶ段階になって、われわれ大学教員が接することになりますが、現場で教えている感覚としては、この間、学生さんの気質が少し変わってきているように思います。それは、法教育の影響もあるでしょうし、それ以外の一般的な学習の在り方の違いによって生じているものなのかもしれません。

 大学法学部の教員はこれまで、高等的専門的な教育を念頭に置いてきました。しかし、初等中等教育における法教育・主権者教育の取組みが進むなかで、一教育機関たる大学においても、これらの教育との連携をはかっていくことが、公正なより良い社会をつくっていくうえで必要なのではないかということを、私も法教育に関わるようになってから、強く意識するようになりました。
そこで、この企画では、法学部において熱心に教育に取り組んでおられる第一線の研究者の先生と対談をさせていただき、法学部教育ではどのようなことをやっているのか、また、法学部教育の経験から現在の法教育・主権者教育を見たときに、どのような印象や提言をお持ちか、意見を伺いながら議論していきたいと思っています。
 そして、そうした議論を法教育・主権者教育に携わっているすべての方々にフィードバックすることによって、法教育・主権者教育と大学の専門的な教育の、一層の連携の深化が図られるひとつのきっかけになれば、と願っています。

宍戸 常寿(東京大学法学部)

 

 

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