教科書を見るシリーズ 小学校編(5)社会6年(後半)

 小学校社会科教科書第6学年の下巻は、政治と世界の中の日本について学習します。憲法や裁判、政治参加といった法教育の重要なテーマが登場します。小学校社会科教科書の締めくくりも、弁護士の春田久美子先生とともに見ていきたいと思います。教科書は東京書籍と教育出版の2社のものを取り上げます。

【下巻のテーマ「政治とは」について】

春田先生:「『新編 新しい社会6下』(東京書籍)p.2~3の左右対称の写真を眺めると、左側が身近な町、右側が国(中央)という具合に並んでいて、住民自治から国政へと民主主義や政治を理解する上で身近なところから遠いところを示唆してくれています。
 また、どちらの教科書も、「子育て支援の願い」や「まちで暮らす人々の願い」を叶えるために、若しくは「震災復興の願い」を叶えるか、いずれか1つを選んで学びましょう、という構成になっていますが、これは、政治、というものの究極的な目標が“人々の願い”である、という深い示唆を易しく示してくれているように思えます。
これは、国家のあり方を決める上で最も重要な法規範である〈憲法〉の中でも、もっとも重要な条文が、13条“個人の幸福追求権”であることに通じる考え方です。
 高校生や大学生、大人でも、『政治って何だろう?』『政治とは、一体どういう作用なのか?』ということは意外と表現しにくいものです。私自身は、『自分たちの暮らしに密接に関係しているのだ』、(究極的には)『みんなの願いを叶える為のもの』ということを如何に伝えられるかがこの下巻の教科書で伝えるべき最大のテーマだと思っています。
『新編 新しい社会6下』(東京書籍)p.2「わたしたちの生活と政治」、『小学社会 6下』(教育出版)p.2「暮らしの中の政治」といった一見ありふれたフレーズには、実は深いメッセージが含まれているのだな、と今回教科書を見せていただいて痛感しました。」

 

――春田先生から、「政治はみんなの願いをかなえるためのもの」という、下巻の教科書全体にかかわる大事なコメントをいただきました。

【人々の願う暮らしと政治に関して】
『新編 新しい社会6下』(東京書籍)p.4~29「子育て支援の願いを実現する政治」「震災復興の願いを実現する政治」
『小学社会 6下』(教育出版)p.4~25「わたしたちの暮らしを支える政治」

 教育出版の教科書でも、世田谷区の子育ての支援や釜石市の復興に向けての取組みが取り上げられています。

春田先生:「さて、実際の授業の進め方ですが、(「子育て支援の願い」か「震災復興の願い」のいずれを選択するにしても)調べ学習をすることから始まるようです。これは“願い”といっても、子どもたち自身には生活体験が大人ほど多くはないため、その論点について、そもそも、どういう願いがあるのか、どういう差し迫った実情があるのかは、インタ-ネットを調べたり、身近な大人たちにインタビューしたりしないとわかりにくいからでしょう。ポイントは、子どもたち自身が、そうやってインタビューや下調べをすることを通して、生活の中にこそ、政治(という作用・仕組み)を必要とする感覚が潜んでいるのだ、ということを少しでも感じることだと思います。
 さらに、その“願い”自体も様々であり、中には対立したり方向性が必ずしも一致しないものさえ存在することがクラスの子どもたちからの発表で浮き彫りになるのではないでしょうか。その多様性に気付くこと、視点の違いに気付くことこそが、法教育の根本であり、出発点だと思います。
 子育て支援でいえば、最近では、実際の例として、そもそも子どもの声は騒音か?(子どもの声がうるさいとの理由で保育園の建設が近隣住民から反対される例など)、という問題があったり、同じ国民・住民の中でも子育て真っ最中の世代と子育てが終わった世代との間では、意見は一致するとは限らないこと、子どもを望んでいても授からない人を含め、皆が皆、必ずしも同じ意見とは限らないことも浮かび上がれば、それを以てひとつの到達点としてもよいのではないか、と思います。
 住民同士でなく、たとえば、住民の立場と市議会あるいは市長といった政治を行う立場になってみると、さらに視点が変わる、ということに気付かせるのも重要でしょう。ロールプレイなどで、それぞれの立場になりきって考えてみると、一筋縄ではいかないことにたどり着くはずです。たとえば、公共施設を1つ作るにしても、そのためには現実問題としてお金(税金)が必要になったりするからです。
 私自身は、この、“限られた財の配分”、というのが政治の究極の場面ではないか、と思っていますので、この感覚をどうしたら理解してもらえるか、を目標として、そのためのネタ(教材)を意識して探すようにしています。」

 

――調べ学習にロールプレイなどを組み合わせ、子どもたちの学習が深まるようにするのですね。

【話し合いに関して】
『新編 新しい社会6下』(東京書籍)p.30~31「公園づくりについて話し合おう」
 「公園づくりについて話し合おう」は、「地域の公園づくりにわたしたちの声をいかそう」というテーマで、いろいろな人の話を聞いてどのような立場があるのか確かめ、多様な意見を取りまとめていくために、どのようなことに気をつけるべきか、みんなで話し合う例が挙げられています。
『小学社会 6下』(教育出版)p.23「市役所の人の話」
 釜石市復興まちづくりに関する「市役所の人の話」では、釜石市が東日本大震災からの復興と将来に向けた新しいまちづくりをするため、どのような姿勢で臨んでいるかが語られています。「時間や予算が限られていますので、すべての人の願いを実現するのは難しい」としながらも、「市民の声をきく機会をできるだけ増やして、具体的なまちづくりに生かしていきたい」そうです。

――東京書籍の教科書では、小学生にも身近な公園の利用というテーマについて、話し合いをして意見をまとめてみようと提案されています。政治が自分たちの暮らしに身近に感じられる授業になりそうだと思います。教育出版の教科書には、多様な意見を取りまとめる難しさの1つに時間や予算の限定という面が挙げられています。自分たちが話し合いをする際の視点として、とても参考になると思いました。

春田先生:「ここでは、子どもたち目線で色々な意見が出てくると予想されますが、上記の、「意見には様々なものがある」「立場が違えば、意見も異なる」「どの意見にも、それぞれ何かしらの理由や根拠がある」ことを意識して発表してもらうとよいでしょうね。今、学校現場で必要なAL(アクティブ・ラーニング)の手法で行う授業として格好の教材ですね。
 多様な意見が出されたとして、次のポイントは、果たして折り合いはつけられそうかどうかを話し合うこと、さらに、折り合いがつかないときはどうするか、を考えることです。
 東京書籍p.32~33の富山市でのライトレールの取組みは、各自治体や私たちが暮らす市町村やもっと小さなエリアごとに物事・問題を解決する取組みを考える授業例ですが、同様のエピソードはあちらこちらにあるはずです。自分たちが暮らす身近な町では課題にどうやって大人たちが向き合おうとしているか、解決策に近づくダイナミックな動きを知る格好の場面です。
 私が実際に取り扱う例としては、ペット(飼い犬)税の導入を考えているある自治体(大阪府の泉佐野市)のケースをもとに考えてもらったことがありますが、小学生でも十分に活発な議論ができると実感しています。
 意見を取りまとめるに際して、政治は、限られた財を如何に効率的に、有意義に配分するかというものですが、この授業で気付いて欲しいのは、何かを決めないと物事は前に進んでいかないので、色々と迷ったり、異論はあっても判断すべき場面では決めないといけないこと、他方で、異なる意見、とりわけ数の上では少数派の意見・声を、どうやったら政治の場面で活かすことができるか、といった相反するような問題を考え続けなければならない、多数決で決められたことも、絶対に正解とは限らないよね、という感覚をどうやって子どもたちに理解してもらえるか、でしょう。」

 

【裁判所と三権分立に関して】
『新編 新しい社会6下』(東京書籍)p.38~39「裁判所の働き」
『小学社会 6下』(教育出版)p.16~17「裁判所のはたらき」

 2つの教科書とも、身近なまちの暮らしにかかわる政治の次には、国会・内閣・裁判所の仕組みを取り上げています。

――裁判の仕組みの解説が中心になりがちだと思いますが、裁判員制度も取り上げられていますから、法教育らしさの出せる授業を考えたいところではないでしょうか? 時間の制約が厳しいと、難しいかもしれませんが。

春田先生:「まず、前提として、「国の政治のしくみ」として東京書籍ではp.34から、教育出版ではp.12から政治の仕組みを解く場面から始まります。この辺りは、授業でも、テストでもよく扱われるお馴染みの箇所です。
 司法府(裁判所)の存在する理由にも関わりますが、ここでのポイントは、三権分立という仕組みをとった理由を、歴史を踏まえて説明することだと思います。
 権力は暴走したり、人権を蹂躙する危険性がある、実際に世界の歴史がそれを示唆してくれる(フランス革命やアメリカの独立宣言が出来た背景などのエピソード)ことを小学生にでも説明することは必要と感じます。政治の仕組みや憲法とは、もともと、そういう歴史的背景を抜きにしては語れないものだからです。
 政治の上では正当に成立する法律、といった形をとっても間違うことがある、基本的人権を侵害してしまう政治というのが行われることがあるのだ、という考え方を伝えることがポイントとして、それをどう伝えたらよいのでしょうか?
 私は、意識的に、国家は誤ることがある、間違いをおかす場合がある、だからこそ、違憲立法審査権などの考え方、が出てきたのだ、ということを具体例を挙げて説明するようにしています。実際に、裁判で争われた例として、ハンセン病をめぐる法律や国策が誤っていたという事例を示すなどしつつ、といった感じです。
 この辺りは、実は、多数決は果たしていつでも絶対的に正しいのか、間違うことはないのか、といった法教育の中でもとても重要な場面なのです。子どもたちに、「いつでも、多数決って、間違うことはないのかな?」と問い掛けると、「えっ?」と意外そうな反応が出ます。「間違うはずなんか無いんじゃないの?」という具合に。第二次世界大戦の頃の独裁者を例にして、民衆の多数派が選んだ指導者が間違いをおかす場合があることを話します。」

 

――「多数決はいつでも正しいのか」は大変重要な問いだと思います。教科書のここで押さえておけるのですね。

【日本国憲法に関して】
『新編 新しい社会6下』(東京書籍)p.40~53「わたしたちのくらしと日本国憲法」
『小学社会 6下』(教育出版)p.26~35「憲法とわたしたちの暮らし」

 憲法の3つの原則について、どちらの教科書も詳しく説明しています。

――教育出版のp.27では、「バリアフリー法」という法律の趣旨が日本国憲法の考え方に基づいていると説明されています。具体的な法律名が挙げられていると、憲法に基づいて法律が作られていることが伝わってくると感じました。基本的人権の尊重に関して、春田先生はどんなアイデアがおありですか?

春田先生:「そうですね。法律は、おおよそ、何らかの目的を達成するために人々の行動を規制する必要性があったりして作られるものですから、そういう具体的な法律をイメージして授業ができると伝わりやすくなるので良いですね。とても身近な例として、私たちが安全に道路を歩いたり、交通事故に遭わなくて済んだりするように、赤信号は停まらないといけない、など道路交通法などのルールは出来ているわけですものね。
 さて、基本的人権の尊重に関して具体的な授業のアイデアとしては、『“幸せな国”ってどんな国?』という授業を6年生で実施したことがあります。これは、ゲストティーチャー(弁護士)による法教育を、単発のイベントで終わらせるのではなく、なるべく平素の授業の中で、単元の中で展開できるようにするために開発したものです。法務省(法教育推進協議会が主催)の懸賞論文の中でもご紹介したものですが…」

 

<授業例『“幸せな国”ってどんな国?』>
⑴ 目標:憲法の三大原則(平和主義・基本的人権の尊重・民主主義)が、身近な日々の暮らしの中に息づいていることに気付く!
=私たちの“幸せ”を守り、維持するために大切なコトが憲法という形で決められていることを知る!  
← 法の普遍的な価値が詰まっている憲法を子ども目線で考える授業。
⑵ 内容:法の最終的な目標・実現したい究極の価値は子どもたち一人ひとりが“幸せ”に生きること(憲法13条「個人の尊厳」)であるが、その“幸せ”とは何かを、日常生活に根ざした子どもたち自身の目線で考えてみることで、憲法の存在意義を実感を持って捉えてもらう。
⑶ 方法
* 子どもたち一人ひとりに、自分が考える“幸せ(な国)”とは何か、をイメージしてもらう。考えてもらう。
* 次に、身近な人(保護者や友人、祖父母や地域の人など)にインタビューして、その人にとって“幸せ”は何かを聴き取っておく。
↑ここまでは、前準備として作業してもらう。
* 授業当日・・・
みんなが考えてきた“幸せ”が守られ、続くためには、何が必要だろうかを考え、それを班活動として、各班毎に、“憲法”(仮称)という形で3つ、言葉にして表現してみる。各班毎に画用紙に書き込んで、それを黒板にズラーっと並べ、発表してもらう。
その後、ゲストティーチャーである弁護士が、日本国憲法の前文を紹介しながら、憲法について柔らかくお話する。
あわせて、ブータンやアメリカの憲法前文も紹介しながら、世界各国の人々にも目を向けながら、人々が願う“幸せ”を守るために、憲法というものが存在するのだ、ということを伝える。

春田先生:「はじめから、大人(教師)が『三大原則はこうなっています』と伝えてしまうのではなく、子どもたちの生活感からからたどり着く、という授業構成です。」

 

【政治参加に関して】
『新編 新しい社会6下』(東京書籍)p.56~57「わたしたちにできる政治参加」
 よりよい社会を実現するために、今できること、したいこと、堺市の小学校の取組みの例が挙げられています。
『小学社会 6下』(教育出版)p.36~37「政治への参加について話し合おう」
 戦後の衆議院・参議院議員選挙の投票率推移、2012年の衆議院議員選挙年齢別投票率、意識調査や外国の選挙制度などの資料を基に、国民の政治参加について話し合おうと提案されています。

――選挙というと、子どもにとってはまだ先の話になってしまいますが、東京書籍のように「今できる参加」があることを示されると、政治を自分のこととして考えられると思いました。

春田先生:「そうですね。大切なご指摘です。学校での生活を送る日々の中でも、子どもたちなりに衝突があったり、困り事があったりするクラス、学年はあると思います。法教育で最終的に身に付けて欲しいのは、まさに、そういう現実の暮らしの上で直面する課題に対して、如何に民主的に、かつ、少数意見の持ち主のことまで配慮して問題を克服するか、試行錯誤を経て、主体的に関わって合意形成ができるようになるということだと思っていますから、その解決のプロセスを学ぶのが重要です。
 実際に、ある学校で、掃除を真面目にやらないクラスメートがいるときに、どう解決するかを話し合う活動を指導する、といった法教育の出前授業を実施したこともありました。大人の世界でも、また、実際に裁判事例としても少なくない事例として、『野良ネコに餌をやるってどう思う?』という授業は小学生でも、それなりの反対・賛成両方の立場からの意見が出やすい教材とのことで好評のようです。」

 

【世界の中の日本に関して】
『新編 新しい社会6下』(東京書籍)p.96~97「国際紛争と平和」
世界の平和を実現するために、私たちが「地球という同じ星に生まれた人間だということを忘れてはいけないね。」と書かれています。パレスチナ紛争解決のため、「イスラエル、パレスチナ自治区、日本の子どもたちが、日本での合宿を通じて、友情とおたがいの理解を深め」たことも紹介されています。
『小学社会 6下』(教育出版)p.58~59「つながりの深い国々について話し合おう」「多文化共生社会をともに生きる」という囲みでは、神奈川県川崎市が、地域に「ともに暮らしている仲間として、外国籍の人々の声も政治に生かし」たり、「さまざまな国の文化を地域全体で一緒に楽し」むことで、お互いの理解を深めたりする取組みを進めていることが紹介されています。

――2つの教科書で取り上げられている素材は違いますが、平和な社会の実現に向けて、相互理解が大切であるとしている点は共通していますね。

春田先生:「文化や背景が異なる者同士の利害をどのように調整していくかは今後も日本でますます重要かつ深刻な問題になっていくはずです。最近ではヘイトスピーチや教育費の無償化をめぐって問題になりましたし、卑近なトラブル事例としては、ゴミ出しをめぐるルールを守らない、ということで近隣住民とトラブルが生じている例なども現実問題としてあります。労働人口の減少で、今後、外国人労働者を受け容れるべきかどうか、などの問題は切実な問題になっていますから、小学生のうちから、まさにこの辺りの人権感覚を育んでいくことは重要ですね。
世界に目を転じれば、民族間での紛争が止まない中東では学校へ行けない子どもたちも実際に存在するということが、マララ・ユスフザイさんの行動で日本の子どもたちにも伝わるようになりました。九州の方ですが、ペシャワール会(中村哲医師)といってアフガニスタンで用水路を建設する、といった形で支援を続けている民間団体の話しを紹介したりもできる場面です(教育出版p.62~64「世界で活躍する日本人」)。ゲストティーチャーを招く授業にすると刺激的で説得的な授業になるでしょう。」

 

【持続可能な社会に関して】
『新編 新しい社会6下』(東京書籍)p.98~99「環境問題の解決に向けて」
『小学社会 6下』(教育出版)p.70~71「地球の環境とともに生きる」

 どちらの教科書も、豊かな暮らしと環境問題の解決を両立させるためには、「持続可能な社会」を目指すことの重要性を説いています。特に教育出版は、「世界の人々がともに豊かに暮らすためには、限りある資源から得られる利益がすべての国の人々に公平に行きわたるしくみを考えていくことも大切です。」と書いています。

――「公平な分配の仕組みを考える」という、法教育のテーマの1つが出てきました。素材が地球の資源というと小学生には難しいかなと感じますが、少しでも具体的に展開できるでしょうか?

春田先生:「京都議定書やパリ協定をめぐる実際の最近の日本や世界各国の動向を新聞報道で学ぶ授業などは、NIEとしても有効のように思います。」

 


【小学校の社会科教科書を見終えて】

――6年生の教科書は、上巻の日本の歴史も含め、ピックアップできる箇所が豊富でした。お蔭様で終点まで到着しましたが、振り返って春田先生のご感想などはいかがですか?

春田先生:「小学生の教科書には、実は、大人でも改めて学ぶべき法教育の中でも重要な視点がたくさん詰まっていることがわかりました。ですので、新学習指導要領でも重要になっているAL(アクティブ・ラーニング)を展開する格好の科目・単元だと確信しました。社会の授業といえば、自分自身が小学生のときの授業を振り返って思うとき、仕組みそのものや制度の名称を暗記する、といったイメージが強くあったのですが。
このときに留意したいのは、世の中には正解が無い問題も多く存在する、ということです。たとえば、『野良ネコに餌をやるってどう思う?』という授業でも、答えなんて出ないわけです。ある自治体では罰則付きで禁止する条例を設けてでも禁止しようとしていますし(京都市で2015年「動物との共生に向けたマナー等に関する条例」を施行)、逆に、ある自治体では地域猫活動を盛んにし、野良猫の不妊・去勢手術が進むような仕組みを構築(和歌山県で2017年4月、「動物の愛護及び管理に関する条例」を施行)しようとするなど、様々なのです。
 裁判でも、一審と二審の判断が異なるなど、何が一体正解なのかは混迷する争点があるのも現実です。
 そういう現実の中で、普段から何気なく使っている〈自由〉〈平等〉〈正義〉って、一体、どこにあるのだろう? 何が、本当は平等なのか? 正義なのか? を考えることは、実はとても難しいことなんだな、ということに気付いて欲しいのがまずひとつ。でも、正解がないからと諦めるのではなく、解決すべき問題の所在を明らかにし、正解らしきものがあるのではないか、と試行模索すること自体に何とかチャレンジして頂きたいのがもうひとつです。そのことが、私たち一人ひとりの国民が、この国の中で、世界の中で結局はハッピィになれる方法であり、法教育は、それを目的とするものだからです。
現実の暮らしの中、市井の人々の声に耳を傾け、問題を真っ直ぐに見つめるところから法教育は始まるのかもしれない、教科書をゆっくりめくりながら、そう私自身も改めて気付かされました。どうもありがとうございました。」

 

――貴重な授業例、アイデアをたくさんご提案いただき、本当にありがとうございました。

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